電話番号

魚の骨が刺さったとき ─緊急時の対応④

著者:デンタルオフィス湊

緊急時の対応の第4回目です。
今回は「魚の骨が刺さったとき」についてお話をさせていただきます。
多くの方々が喉に魚の骨を刺した経験をお持ちではないでしょうか?

「のど」とは

「のど」とは、口の奥、つまり、口蓋垂(のどちんこ)のある辺りから、食道・気管の入り口までを、俗に「のど」と言います。
「咽喉」と呼ぶこともあります。
雅語形では、「のんど」とも言うそうです。
医学で言う咽頭と喉頭を合わせた部分を指しますが、はっきりとした境目がありません。
ちなみに、「のど」とは、食物の入り口を意味する「飲み戸」の音便の「のむと」が約されて「のど」と言われるようになったと言われています。

さて、「のどの異物(のどに刺さったものをいいます)」としては、一般に魚の骨や、鳥の骨があげられます。
これらの異物を大まかに2つに分けたいと思います。
1つは、うなぎやイワシなどの細くてたわむタイプの骨、2つ目は、タイ(鯛)や鳥の骨などの固くて太い弾力性のないタイプの骨です。
刺さりやすい部位は、咽頭部です。
もちろん、歯肉や食道の粘膜に刺さることもあります。

「のど」の構造

「のど」の構造を簡単に説明します。
口の奥から、上方は鼻腔に、前方は口腔に、下方は食道の上端に位置する漏斗状の部分を言います。
咽頭部は、上・中・下と3つに分けられます。
口を大きく開いた時に、つきあたりの部分が中咽頭と呼ばれている部分です。
上咽頭は、軟口蓋の影で見えません。
また、下咽頭は(中咽頭から喉頭まで)は舌で隠されて見えません。
上咽頭と中咽頭の境に「パッサーバン隆起」があって、飲食物を飲み込んだり、声を出したりすると、ここが膨張して、物が鼻に行かないようにしています。
扁桃のしくみと働きについて、大雑把に説明します。
咽頭の粘膜下には、病原微生物の感染に備えて、多くのリンパ組織が存在します。
このリンパ組織が集まって大きくなったものを扁桃と言います。
代表的な扁桃としては、咽頭扁桃(アデノイド)、耳管扁桃、口蓋扁桃、舌扁桃などがあります。
これらの扁桃は、中咽頭を取り囲むように存在しています。
「ワルダイエルのリンパ環」あるいは、「咽頭環」や「扁桃輪」と呼ばれています。

骨が刺さった時の対処法

いよいよ、骨が刺さった時の対処法について説明します。
民間療法として、本などにも書かれている、ごはんや泥状物を一気に飲み込む方法があります。
骨が小さく細い時は、ある程度の効果ぎあると思います。
しかし、どの程度の骨ならごはんを飲んでいいかわかりません。
もし、ごはんの丸呑みで骨が折れたり、より深く刺さってしまったら大変なことになります。
ですから、骨が刺さったら、迷わず歯科か耳鼻咽喉科に行ってください。
どんなものでも、のどや歯肉などに刺されば、程度の差はあっても、ほぼ感染してしまいます。

鯛や鳥の骨など、太くて大きいものが刺さった時は、できるだけ早く受診してください。
放置すると、感染が重篤化して、膿瘍を形成することがあります。
口を開けて、刺さった骨が見えるなら、近くの歯科医院か耳鼻咽喉科で摘出してもらえます。
しかし、咽頭を越えて食道に刺入したものは、専門医による治療が必要となります。
食道の入り口直下には、輪状咽頭筋や咽頭収縮筋があり、食道のこの部分は、緊張性収縮を繰り返しています。
そのため、食道では、ほとんどこの部分に骨の刺入が多くなってしまいます。
摘出は、食道鏡を使います。
刺入部位を確認し、鉗子で除去します。
浅いものは局所麻酔下で、深いものは全身麻酔下で摘出します。
感染してる場合は、3日間もしくはそれ以上の抗生剤の投与をします。

のどに物がつまったときの手当て

さて、今回のテーマから少しズレますが、もしのどに物がつまったときの手当てについてお話したいと思います。

1.意識があるときは、咳をし続けてもらいます。
口腔内を見て、異物があれば取り出します。
(呼吸音が聞こえない、急に息苦しさや石を訴えた、急に声が出せなくなった場合は、異物や分泌物による気道閉塞が考えられます)

2.口腔内を見ます。
口を開けるときは、親指を上の歯に当て、人差し指を下の歯に当てて、ひねりながら開けます。
これを指交差法といいます。
指交差法は、気道確保や異物や吐物が気道につまっているときに行います。

3.指で異物を取り除きます。
口腔内に異物や分泌物が見えたら、患者さんの顔を横に向けて、指交差法をしている反対の手で除去します。
人差し指に、ガーゼかハンカチ、布などを巻いて除去します。

4.側胸下部を圧迫します。
患者さんを背臥位(あおむけ)か腹臥位(うつぶせ)にします、
救助者は、患者さんの側方、あるいは下半身にまたがってひざまずいてください。
指を広げて、患者さんの側胸下部壁に置いて、下部胸壁を内側下方にむかってひきしぼうように瞬時に圧迫します。

5.背中を叩きます(背部叩打法)。
①立っているときはこの方法を行います。
救助者は、患者さんのやや後方から、片手で患者さんの前胸壁を支えて、前かがみにうつむかせます。
他方の手の付け根で、両側肩甲骨の間を4回、力強く4回、迅速に連続して叩きます。
患者さんの頭を胸より低く保ってください。
②腹臥位(うつぶせ)のときも、この方法を行います。
腹臥位のときは、救助者はひざまずいて、患者さんと向き合います。
患者さんを側臥位(横向き)にして、片方の手を患者さんの肩に置いて、他方の手で患者さんの両側肩甲骨の間を力強く迅速に連打してください。

いずれの手当ても効果がないときは、ただちに救急車を呼び、救急車もしくは医師がくるまで手当てを続けてください。

次回は、口の中や舌、口唇が切れたときの対応について、説明させていただきます。

院長:荒内