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    成人期の歯周病の予防と治療Ⅰ

    著者:熱田貴子

    おはようございます。9月の連休に入る少し前から、気温が徐々に下がって来て、随分寝やすくなってきました。今は、covid-19は終息してはいませんから、コロナウイルス感染症の猛威、夏の猛暑疲れ、インフルエンザウイルスの感染症の活発化などに気を付けなければならないと思います。なかなか気を抜けない日々が続きますね。気を付けて行きたいと思います。

    今回は熱田のコラムです。

    「成人期の歯周病の予防と治療Ⅰ」

    1、予防にはこんなことを心がけて下さい

    【歯周病の原因】

    むし歯(齲蝕)と歯周病の原因は、両方ともプラーク(歯垢)です。歯周病は、このプラークが歯と歯ぐきの(歯肉)の境目に付着することから始まります。

    従って歯周病の予防に大切な事は、①原因となるプラークを付着させない事、②付着しても速やかに取り除く方法を習慣づける事、③そして身体にプラークに負けない抵抗力をつけることです。

    【ブラッシング】

    まず、プラークを取り除く方法として最も効果的なのは、歯ブラシや補助清掃用具を上手に使用することです。毎日の確実で規則正しいブラッシング(歯磨き)が歯周病を予防します。しっかり歯磨きを後のうがい薬の併用も、補助的な効果があります。

    【健康な食生活】

    また、プラーク形成とかかわりの強い、軟らかく糖分やでんぷんの多い食べ物は避け、繊維質の野菜や果物などを多く食べることも予防効果があります。

    更に、プラークに負けない歯肉を作るために、全身の健康にも心がけなければなりません。

    栄養が不足したり、極度に疲れたり、ストレスが溜まったりすると、歯肉の抵抗力が低下することが知られています。抵抗力を高めるために栄養のバランスをとれた食生活を送ること、特に不足しがちなビタミンの摂取、その中でも歯ぐきを強くするビタミンCの多い食物を食べる事も必用です。

    もし口の中に違和感を感じたならば、身体の疲労度や健康度もチェックしてみてください。

    【禁煙・節煙】

    禁煙が歯の周りの歯周組織の抵抗力を低下させ、歯周病の進行を促すことも判っています。よって、喫煙者の方は禁煙が必要になります。

    【定期検診】

    最後に、歯科医院で定期検診を受けるのも歯周病の予防、早期発見、早期治療への近道であることを付け加えたいと思います。

    2、一般的な治療はこんな風になされます

    歯周病の原因はプラークですが、プラークに、唾液や血液の中の無機質成分が吸着し、歯に強く付着する歯石も表面がざらついていて、更にプラークを付着させる要因となります。これらのものが、歯肉に炎症を引き起こし、歯肉の腫れ、出血、排膿、歯の周りの骨を溶かす原因となります。従って治療にまず必要なことは、それらの炎症の原因となるプラークと歯石を口の中から取り除く事です。

    また、歯周病によって失われた、噛んで食べる能力を回復させることも治療の大きな目的です。

    【プラークの除去】

    具体的には、患者さん自身によるブラッシング(歯磨き)励行が、プラークを取り除くのに一番の方法です。これは患者さんご自身が、家庭でできる治療でもあります。そのためには歯ブラシを生活の一部として習慣づけること、常に正確な歯磨きを心がけること、更に歯科医師や歯科衛生士に磨き方のチェックを定期的に受けることが必要となります。

    【歯石の除去】

    歯肉の上や、その下に潜り込んで歯に付着している歯石は、歯科医師や歯科衛生士が専用の器具(スケーラー)を使って取り除き、清潔にします。この処置の事を「スケーリング」および「ルートプレーニング」と呼びます。この治療法は、歯周病がが進行してしまった人に対しては不可欠のものです。

    さらに歯肉の下に深く或いは、歯の根と根の間に入り込んでしまっている歯石に対しては、歯周外科手術によって取り除くこともあります。これにはいくつかの方法がありますが、最近、より理想的な形で歯周組織を治すための、歯周再生療法(GTR法、エムドゲイン法)も開発されていますが、この手術ができる状態、すなわち適応症は限られています。

    【グラグラする歯の治療】

    歯周病でまわりの組織が失われ、グラグラするようになった歯に対しては、いくつかの歯を一緒につないで揺れなくしたり(固定)、噛み合わせを調整して揺れる歯を安静に保ったり(咬合調整)します。また手遅れで揺れすぎる歯に対しては抜くこともあります。

    【定期検診】

    歯周病の治療は一度治ってからも続きます。つまり、歯科医師や歯科衛生士による定期的な検診が必要になるのです。これを行うことで、歯周病の再発を防止できます。この定期検診の間隔は、患者さんの状態により異なりますが、3ヶ月か半年ごとに行われる場合が多いようです。

    3、歯周病の歯磨きはどのようにすれば効果的ですか!?

    【ブラッシング法(歯磨き法)】

    歯周予防や治療のためには、歯と歯肉との境目(歯肉溝)付近にプラークが付着しないためのブラッシング法を覚える必要がありますこの部分は、歯周病の初発部位だからです。

    歯磨きの代表的な方法にはスクラッビング法やバス法があります。スクラッビング法は歯ブラシの毛先を歯面に垂直に当てて上下に小刻みに動かして1本づつ歯を横に移動していく方法です。バス法は、上の歯の歯と歯肉の境目に下から45度の角度でブラシの毛先を入れて、毛先を動かさず振動させます。下の歯は上から45度の角度に入れて振動させます。この方法は歯ブラシの毛の先を使い、歯肉溝や歯の側面からプラークを取り去る方法です。

    【歯ブラシの選択】

    効果的な歯磨きを行うためには、自分の口に合った、大き過ぎない歯ブラシを選択し、1日に最低1回は丁寧に完全に汚れを取り除く時間を設ける必要があります。1日何回みがいても良いのですが、いい加減な方法では意味がありません。«歯を磨く»事と«歯がみがけている»事が違う事に注意しなければなりません。

    「歯を毎日みがいているのに歯周病やむし歯になってしまった」という方は、歯科医院で磨き方のチェックを受けてみて下さい。

    【歯ブラシの動かし方】

    歯の1本1本を磨く気持ちで、まずどの歯から磨くかを決めます。1つの例として右上の奥歯のほっぺ側から始めたら、歯ブラシを左側へ歯を1本ずつ丁寧に磨きながら移動していきます。次に、歯の裏側を逆に右へ戻っていきます。さらに右下に移って、奥歯のほっぺた側から同じように左へ向かって動かしていきます。そして、裏側も同じように磨いて戻っていきます。最後に上下の噛む部分の面をしっかり磨いたら終了です。

    つまり、自分で、磨き始めの歯と、磨き終わりの歯を決めて道草をしない様にゆっくりと丁寧に歯ブラシを動かしていくのです。洗面所などで鏡を見ながら練習してみてください。

    【補助清掃用具の併用】

    歯ブラシのだけで磨けない場所があれば、デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助清掃用具を併用して、その部分を磨くようにします。

    何を使うべきか又使い方が良く解らない場合や痛みがあってうまくできないような場合は、歯科医師や歯科衛生士の指導を受けるようにしてください。

    4、歯ブラシはどんなものが良いですか?

    自分に合った歯ブラシを選ぶことは、以外と難しいです。ここでは、一般的に良い条件を兼ね備えた歯ブラシの基本について説明します。

    まず横から見て、歯ブラシの毛の生えている部分(植毛部)の幅は、指2本程度(25~30mmぐらい)が適切です。そして上から見て、毛束は3列ないし4列植えてあり、毛の素材はナイロン製のものがよいでしょう。

    硬さは、歯肉(歯ぐき)が健康な人なら普通か、硬めのものがよいのですが、歯ブラシの歯に当てる力が強すぎる人は、歯をすり減らしたり、歯肉を傷付ける原因となってしまいます。

    そのような経験のある方は硬い毛の使用は避け、歯科医師の指導を受けましょう。また、歯周病に罹っている方なら、最初は軟らかめのものを使って、出血や痛みが無くなってきたら、普通のものに変えていくとよいでしょう。

    歯ブラシの素材がナイロンの場合、歯ブラシがシャギーにならなくても、約1ヶ月で弾力が減少してしまいますので、歯ブラシを交換なさってください。

    歯ブラシは毛先が開いたり、丸まったら交換の時期です。分りにくい場合は、歯ブラシを裏返してみて、毛先が横にはみ出して見えたら取り替えて下さい。個人差はありますが目安として、1ヶ月に1本程度を基準と考えて下さい。

    柄の形は握りやすく、適度な長さのものが良いのですが、毛先を使う磨き方の時は、ペングリップ(鉛筆の持ち方)で行いますので、それがやり易い物を選んでください。

    現在、多種類の電動歯ブラシ(ヘッドが電動で動くもの)などが市販されていますが、まずは普通の歯ブラシで磨き方の基本をしっかり覚えてから、使うようにしましょう。どれを選んだらよいのかが分からないようでしたら、歯科医師や歯科衛生士に相談してみてください。電動歯ブラシは短い時間で効率的に磨けるのが利点ですが、誤った使い方をすると反対に歯や歯肉(歯ぐき)を痛めますので、注意が必要です。

    5、歯周病治療や予防のための正しいブラッシング法とはどんなものですか?

    歯周病の治療や予防のためには、歯の側面や、歯と歯肉の境目、歯と歯の間をきれいにすることが必要です。ここでは、歯ブラシの毛先を利用する2つの方法を、紹介します。

    1つはバス法です。この方法は主に歯周病に罹っていて歯肉に炎症がある場合などに用いられます。歯ブラシをペングリップで持ち、毛先を、歯と歯肉の境目に約45度の角度で意識して当てるようにします。この時、1本から2本程度の歯を対象に、毛先がその境目の溝に入るようにします。

    そして、歯ブラシの毛先を、その弾力性を利用し、1mmから3mm程度のスクロールで、歯の面に沿わせるように小刻みに10回から30回程度動かします。前歯や奥歯など、歯の種類や、歯並びに応じて歯ブラシを縦に使ったり、横に使ったりします。前述したように、歯磨きの順番を決めて全ての歯の面を磨いていく事がコツです。この時、歯と歯の間にも毛先が出来るだけ入るように工夫します。出来れば、歯と歯の間から毛先を通してください。

    もう一つの方法がスクラッビング法です。この方法は歯周病予防に有効です。歯の外側なら毛先を歯の面に垂直に、歯の内側なら、毛先をバス法と同じように約45度の角度で当てるようにします。この時にも当てた毛先は前後に小刻みに揺らす感じに止め、大きく動かさないようにして磨くことがコツです。

    これらの方法は、いずれもプラークの除去効果が高いことで知られている方法で最初はたいへんですが、慣れてくるとスムーズに出来るようになります。歯みがきで歯肉が下がってしまうことを心配されている方がいます。当てる力が強過ぎたり、乱暴な方法で歯肉に毛先を当てると歯肉が傷つき、歯肉が下がる原因となりますので、不安な方は歯科医院で指導を受けましょう。

    6、洗口剤は必要ですか?

    洗口剤は、歯ブラシによる歯磨きを助ける役割を持ちます。しかし、その効果を過剰に期待するのも危険です。

    洗口剤の薬効は、歯周病菌だけで無く、良い菌も同時に殺してしまいます。歯磨きが出来ない時、洗口剤だけでもと思って使われる方がいらっしゃいますが、逆効果になる可能性があります。

    7、補助用具にはどんなものがありますか?

    歯ブラシの毛先が届かないようなところを磨くのが、補助清掃用具の役割です。特に歯と歯の間(歯間部)は汚れが落ちにくい部分ですが、そこの汚れを取りやすいように工夫をした道具があります。歯間部が狭い人向きにはデンタルフロス、広い人向きには歯間ブラシ(インターデンタルブラシ)があります。歯間ブラシは、歯間部の広さによって大きさを5~6種類程度市販されています。

    その他、歯の凸凹が大きい部分、歯がない部分を補うブリッジを被せてあるところなどにはインタースペースブラシやタンデックスソロ、シングルタフトブラシ、スーパーブラシなどを使う場合もあります。また一番奥の歯や親知らず(智歯)の側面を磨くのには、それらに加えてエンドタフトなどが便利です。

    歯ブラシだけでは、汚れが取りきれない場合がほとんどですので、どんなものを選んだら良いか、歯科医師や歯科衛生士に相談し、自分に合った補助清掃用具を見つけましょう。そして正しい指導を受け、歯ブラシの補助清掃器具として上手に使いこなすことがポイントです。

    今回はここまでとさせていただきます。次回は「成人期の歯周病の予防と治療Ⅱ」についてお話します。