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    成人期の歯周病Ⅰ

    著者:デンタルオフィス湊

    おはようございます。梅雨が明けたら猛暑が始まりました。今年から温暖化に伴い、熱中症アラートが発令されるようになりました。8月11日に群馬県伊勢崎市で気温が40℃を越えました。こんな高温でオリンピックが出来るのでしょうか?

    今回のコラムは熱田が書かせていただきます。

    「成人期の歯周病Ⅰ」

    1、歯周病はどんな病気?

    歯周病(歯周疾患)は、字のごとく歯の周りの病気です。歯の病気とは違います。以前は、

    歯槽膿漏と言われていましたが、現在では、使われなくなりました。

    歯の周りの組織とは、歯肉(歯ぐき)、歯根(歯の根)をおおっているセメント質、歯槽骨(歯を支えている顎の骨)とセメント質と歯槽骨を結ぶ歯根膜から成り立っています。

    歯周病は、歯の表面に付くプラーク中の細菌による感染症の一種で、炎症を主徴候とします。炎症を主徴候とする歯周病は、歯肉炎と歯周炎に大別されます。又、歯周組織に歯軋りなどの強い力が加わって起こる咬合性外傷もあります。

    一般的には、歯肉の炎症から初発し、進行すると、やがてセメント質、歯根膜および歯槽骨までもが破壊されます。更に破壊が進むと、歯を支えることができなくなり、最後には歯が抜けてしまう病気です。成人の抜歯原因の42%が、歯周病によります。

    多くの人が、歯肉炎から重度の歯周炎に罹って、やがて歯が抜けてしまうのは、次のような理由からです。

    ①  歯肉炎では痛みが出ない事が多い

    歯肉炎の場合は、ほとんど痛みが出ないのが特徴です。従って、歯周病に罹っていることに気が付かない事が多いです。そのため歯周病は無症候性疾患(silent diseases)の1種であると言われています。歯肉の痛み、腫れや出血が出る場合は、病気が進行した歯周病になってることが多いです。

    しかし、身体には自分を守る防衛機能がありますので、初期の歯周炎では、軽度の痛みや出血はしばらくすると治まってしまうことがあります。そこで歯周炎が治ったと勘違いしてしまう人が多いのですが、歯周炎は治るどころか、さらに悪化するための準備をしていると言ってもよいでしょう。炎症の最大の原因であるプラークを除去しないで歯周治療は終わりません。安易な自己診断は危険です。

     ②歯が丈夫な人は要注意

    むし歯(齲蝕)で歯が痛い時は、我慢できずに歯科医院を受診する人が大多数です。しかし、前述のように歯肉炎では痛みがほとんど出ないので、また、出ても我慢できるので放置しておく人が多いのです。歯肉炎んは加齢と共に徐々に進行し、歯周炎となり、歯肉の痛み、腫れ、出血が治まらなくなるほど進行すると我慢できずに歯科医院を訪れます。その時には、すでに手遅れで抜歯となってしまうことが少なくないのです。

    従って、歯に痛みが無く、自信のある人でも、定期的に歯科医院を訪れ、歯周病の診察を受けることを推奨します。歯周病の治療も、早期発見、早期治療の原則が当てはまります。

    2、こんな症状は赤信号です(歯周病のチェックポイント)

    次の歯周病セルフチェック表(表1)を使って、自分が歯周病に罹っているか、どうか調べてみましょう。

    歯周病も早期発見・早期治療が重要です。

    表1

    次の項目の当てはまるものに、チェックしてみてください。

    □歯ぐきに赤く腫れた部分がある。

    □口臭が何んとなく気になる。

    □歯ぐきが痩せてきた。

    □歯と歯の間に物が詰まり易い。

    □歯を磨いた後、歯ブラシに血がついたり、すすいだ水に血が混じる事がある。

    □歯と歯の間の歯ぐきが、三角形ではなく、丸い形になっている部分がある。

    □ときどき、歯が浮いたような感じがする。

    □指で触ってみて、少しグラつく歯がある。

    □歯ぐきから膿が出たことがある。

    □くちの中がネバネバする。

    〈判定〉

    チェックが無い場合

    これからもキチンと歯磨きを心がけ、少なくとも1年に1回は歯科健診を受けましょう。

    チェックが1~2個の場合

    歯周病の可能性があります。まず、歯磨きの仕方を見直しましょう。念のため、かかりつけの歯科医院で、歯周病で無いかどうか、歯磨きがキチンとできているか、確認してもらうと良いでしょう。

    チェックが3~5以上の場合

    初期あるいは中等度歯周炎以上に歯周病が進行している恐れがあります。早めにかかりつけ歯科医院に相談しましょう。

    3、歯周病はこんな病気(その1)国民病です

    国民病とは、国民の多数に蔓延して体位・体力を低下させ、生産性を減退させるなど、社会に悪影響を及ぼすような病気と定義されてます。平均寿命のみならず健康寿命の延伸が求められている人生80年の超高齢化社会を迎え、自分の歯が20本あれば、美味しくものを食べる事ができ、素敵な笑顔で、健康で長寿を全うできると言われています。

    しかし、これまでの歯科疾患実態調査によると、歯肉に何らかの異常がある人は約70%に達し、特に働き盛りの中高年者の80%が歯周病に罹っていると報告されています。

    すなわち、単純計算すると歯肉に何らかの症状が見られる患者数は約8900万人と推定されます。しかし、実際、歯科診療所で診療を受けている患者さんは、約130万人です。

    一方、80才で20本以上自分の歯をもっている人の割合は約20%で、一人平均現在歯数は約10本です。永久歯の抜歯の主原因別内訳は、歯周病42%、むし歯32%、破折11%および矯正1%であり、抜歯本数を年齢階級別に見ると、歯を最もたくさん失うのは60~64歳でした。

    4、加齢と歯周病

    前述のように加齢に伴う歯の喪失数の増加が高齢社会の大きな問題の1つとなっています。

    ヒトの歯や口は、ものを食べるだけの器官のみならず、言葉を話す為の器官としても重要な役割があり、また審美的な要素も兼ね備えているので、人が社会生活や文化的活動を営む上で不可欠の器官です。従って、種々の原因で歯や口の機能が失なわれると日常生活を困難にし、生活の質(QOL:quarity of life)や日常生活活動(ADL:activity of daily living)の低下や社会的ならびに全身的な障害の一因となります。

    歯や口の機能を長期間にわたって営むうえで、歯の喪失の原因あるむし歯や歯周病を予防することは重要で、とりわけ歯周病予防や治療は、歯・口の健康作りのみならず、全身の健康作りとも関連のあることからも」生涯を通じた健康作りに不可欠の課題です。

    5、歯周病はこんな病気(その2)生活習慣病です

    生活習慣病(life style related disease)は、食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群と定義されます。歯周病は、プラーク中の細胞によるある種の感染症であることは先にも述べましたが、食習慣や喫煙などの生活習慣とも関連がある事が解ってきました。

    国民の健康に対する興味や認識は高くなってきていますが、一般的に、病気の実体を目でとらえるのは困難です。しかし、歯肉の炎症は目で見ることができます。その原因であるプラークは肉眼では確認しにくいのですが、プラークを染色すれば容易に目で確認できることから、患者さんに歯肉の炎症とプラーク付着との間に関連のある事に気付かせ、プラークをブラッシングで除去することで、歯肉の炎症が改善する事を実体験させることは極めて重要となります。さらに、患者さんにプラークの形成が食生活やブラッシングなどの生活習慣とも密接に関与している事に気付かせ、人の食習慣や生活習慣を改善する事によって歯肉の炎症が改善する事を自己学習させ、問題解決能力を育むことは人生80年の超高齢社会における生涯にわたる健やかなQDLおよびADLを営むことができる基盤形成に役立つと思われます。すなわち、患者さんは歯周病を題材にして「病気には原因があり、原因を除去することで良くなる」という疾病治療の原則を学ぶことができます。又、「病気にならないようにするには、原因を作らないこと」を理解し、自分自身の食習慣や生活習慣を見直し、改め、努力することで予防できることに気づくこともできるようになります。

    今回はここまでとさせていただきます。次回は「成人期の歯周病」を書きたいと思います。