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    成人期の抜歯・麻酔Ⅲ

    著者:デンタルオフィス湊

     

    おはようございます。随分と気温が高くなってまいりました。新型コロナ感染症での緊急事態宣言による「自粛生活」で、マスクの不足やトイレットペーパーの不足、そして消毒薬の不足等に気を取られているうちに、随分と暑くなってまいりました。そろそろ梅雨入りかと思いますが、これからはマスクをしているのが辛くなってくる気候ですね。マスクの中の湿度で喉の渇きに気付きにくいそうです。意識して小まめに水分補給をしないと熱中症になり易いそうです。夏用のクールマスクを探そうと思っています!

    今回は、熱田がコラムを担当させて頂きます。

    「成人期の抜歯・麻酔Ⅲ」

    7、抜歯しない方が良い全身の疾患・状態

    ◆血液疾患(再生不良性貧血、白血病、血小板減少症、血小板無力症,血友病など)

    いずれも抜歯後に止血しにくいため、以前は抜歯を控えていましたが、現在では条件により抜歯が行われています。すなわち、白血病では、長期緩解状態にあれば抜歯は可能です。また血小板減少症では、その治療を行って血小板の回復を待って抜歯を行います。血小板無力症では、あらかじめ血小板輸血を行うことにより可能となります。血友病では、欠乏している凝固因子の補充を行ってから抜歯します。

    いずれも抜歯は内科主治医との連携のもとに行い、さらに抜歯部位の出血に対する対策を立ててから行なわれます。

    ◆糖尿病

    高血糖状態が続くと、血管障害や神経障害が起こり、身体の防衛機能が低下し、感染や出血しやすくなり、同時に炎症や傷も治りにくくなります。そのため、まず抜歯の前に内科で十分な血糖コントロールしたうえで口の中の清掃と、必要によりあらかじめ抗菌剤(抗生物質)を服用しておきます。

    また、炎症やストレスに対する抵抗力の低下や、抜歯による不安や痛みにより血圧変動が起こりやすくなるため、血圧の管理も必要です。抜歯後には十分な止血が必用で、感染を起こさないように口の中の清掃と抗菌剤(抗生物質)が必要です。内科でコントロールされ、ヘモグロビンA1cが7%未満ならば抜歯は可能です。しかし、インスリン注射や血糖降下薬を使用しているような重度の糖尿病では、抜歯などの歯科治療が食事時間に食い込んだり、疼痛のため朝食や昼食を食べず空腹状態が続くと、かえって低血糖になる可能性があります。

    また低血糖の時には、手の震え、冷や汗、場合によっては意識消失の恐れもあるため、抜歯などは避けます。さらに抜歯後に低血糖になる場合もありますので、その時は飴玉やジュースなどを用意しておき、糖分補給を行います。このようなことから、糖尿病があるときは、担当歯科医師に糖尿病であることを告げ、内科主治医と連絡を取り合ってもらうことが大切です。

    ◆肝臓および腎臓疾患

    肝臓は基礎代謝の約25%を担い、糖質、脂質、タンパク質、ビタミン代謝の中心であると共に、アルコールの約90%を処理し、毒物の解毒なども行っています。肝臓病の原因としては、ウイルス、薬物、アルコール、免疫、代謝異常などがあります。

    症状は食欲不振、全身倦怠感があり、肝肥大、黄疸、腹水、浮腫などが見られます。肝臓病の代表は肝硬変で、肝臓癌への移行も少なくありません。ほとんどの血液凝固因子は肝臓で作られるので、重症の肝障害があると抜歯後の止血が困難となります。

    また、慢性腎不全は腎の構成成分であるネフロン数の減少によって腎機能の低下を示すもので、時間経過とともに進行します。腎機能低下の進行を最小限にとどめる為には、原因疾患の治療が重要で、腎機能を悪化させることを避けることが大切です。原因疾患には、慢性糸球体腎炎、膠原病、糖尿病、痛風、アミロイドーシスなどの代謝性疾患、高血圧症などがあります。

    腎不全疾患では、一般に血小板機能異常などによる出血傾向があります。特に人工透析治療は抗凝固剤(ヘパリンなど)を投与されているので、さらに強い出血傾向があります。抜歯は透析翌日が推奨されます。

    また、腎不全患者では、創傷治癒能力と感染抵抗力が低下しているので、抜歯前後には毒性の低いタイプの抗菌剤(抗生物質)の服用が必要となります。

    ◆副腎皮質ステロイドホルモン療法中の患者

    副腎皮質ステロイドホルモン剤は、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患、膠原病、多発性硬化症などの自己免疫疾患に治療薬として用いられます。現在、副腎皮質ステロイドホルモン療法を受けている場合は、副腎の萎縮や予備力の低下があるので、抜歯などの外科的手術により副腎クリーゼと呼ばれるショックを起こす恐れがあります。したがって抜歯に際しては、術前に副腎皮質ステロイドホルモンを増量するか、再度投与が行われます。

    ◆妊娠

    妊娠2~3カ月では流産、8カ月以後は早産の危険があり、また抜歯に際して抗菌剤(抗生物質)や鎮痛剤を服用する必要がありますので、胎児への影響も考慮してこの間の

    抜歯は避けます。

    消炎鎮痛剤は臍帯動脈を収縮させる作用があり、妊婦あるいは妊娠してる可能性のある人は服用しない方が良いでしょう。どうしても抜歯を行う必要がある場合は、妊娠5~7カ月の間に行うのが比較的安全とされています。

    ◆月経

    月経中は血液が凝固する能力が低下することや毛細血管が弱くなるので、止血しにくくなりますが、大きな影響を及ぼすものではありません。むしろ、月経期には神経質、感情の不安定、不安および不機嫌などの症状が出るため、抜歯中の不快症状や抜歯後の痛みを長引かせることになることがあるので、抜歯は避けたほうが良いと言われています。

    今回はここまでにさせていただきます。次回は「成人期の抜歯・麻酔Ⅳ」になります。