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    成人期の抜歯・麻酔Ⅱ

    著者:デンタルオフィス湊

    こんにちは。4月7日に緊急事態宣言に入ってから1カ月半以上が過ぎました。日々の感染者数は減っては来ています。外出自粛は首都圏と北海道を除き段階的に解除するそうです。

    理由は判らないそうですが、日本は新型コロナウイルス感染による死亡者数が圧倒的に少ないそうで、押さえこみは成功といえるのでは?!と言っていらっしゃる大学の先生もいます。

    ただし、ウイルスがいなくかった訳ではないので、共存していくしかありません。まだワクチンも特効薬もありませんから、3密を避け、手洗い、うがいと除菌を心がけていくしかないようです。皆で頑張って行きましょう。

    今回は熱田のコラムを御送りいたします。

    「成人期の抜歯・麻酔Ⅱ」

    7、抜歯しない方が良い全身の疾患・状態

    全身の疾患や状態によっては抜歯時の麻酔、抜歯中、抜歯後の止血などに影響を及ぼす事があります。

    この世なことは、呼吸器疾患、循環器疾患、アレルギー疾患、消化器疾患、血液疾患、内分泌・代謝系疾患(糖尿病)、腎・泌尿器疾患、精神疾患などに見られ、また病気ではありませんが、抜歯を避けた方が良い体の状態として、妊娠や月経などの生理的身体状態があります。

    しかし、これらの場合でも絶対に抜歯ができないという事ではなく、主治医と、良く相談しながら対策を立てておけば可能となることがあります。

    ◆呼吸器疾患(肺炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患)

     

    ☆肺炎

    肺炎がある時の抜歯や歯科治療は極力避けたほうが良く、特に高齢者は致命率が高くなるので、注意が必要です。

    ☆喘息

    発作性の呼吸困難、喘鳴、咳の反復状態、アトピーがある場合は治療の時期を選びますが、喘息治療薬と歯科治療で使う局所麻酔薬、鎮痛薬や抗菌薬との相性に注意する必要があります。又、歯科で使う鎮痛薬によっては喘息発作を誘発するものもあるので、喘息を持っている場合は必ず担当歯科医師に話して置く事が重要です。

    ☆慢性閉塞性肺疾患(COPD)

    歯科治療が慢性閉塞性肺疾患を悪化させることは少ないものの、中等度以上の歯科治療や抜歯の場合は、パルスオキシメーターによる呼吸状態の管理や気道の管理の出来る施設で行った方が良いでしょう。

    ◆循環器疾患(不整脈、虚血性心疾患、高血圧症、心不全)

     

    ☆不整脈

    不整脈は突然死を引き起こすともあるので、歯科治療を受ける前に歯科医師に話しておく必要があります。歯科治療は、心電図モニターがあり、循環器科の主治医との連携がとれる施設で受けるほうが安全です。しかし、不整脈があっても、その治療が適切に行われている場合は特に支障はありません。

    ジキタリスを服用している場合は、鎮痛薬、解熱薬、抗菌剤(抗生物質)によってはジギタリスの作用を強めてしまうものや逆に弱めてしまう物もありますので、歯科医師にジギタリスを服用している旨を必ず伝えましょう。

    ☆虚血性心疾患(心筋梗塞症、狭心症など)

    心筋梗塞の発作後6カ月以内のとき、また6カ月以上経過していても不整脈や狭心症の発作の残っている場合は、抜歯しないほうが安全です。また、狭心症発作が起きた場合に10分間以上持続し、ニトログリセリンを服用しても効果があがらない場合は抜歯は避けたほうが良いでしょう。どうしても抜歯する必要がある場合には、精神鎮静法を併用し、狭心症発作の誘因となる頻脈と血圧の上昇を抑制します。

    ☆高血圧症

    抜歯で問題となるのは、動脈硬化が進行して脳、心臓、腎臓などに合併症がある疾患です。抜歯中の血圧の著しい変動のよって、脳や冠動脈に障害が起こる可能性があるからです。十分に血圧のコントロールがされていれば通常の抜歯では問題が生じることはほとんどありませんが、精神鎮静法(前回「抜歯のための真栖鳳」参考)を併用して、出来るだけ血圧の変動を抑えます。しかし、血圧がコントロールされていない場合は、内科でコントロールしてもらってから抜歯や小手術を受けた方が安全です。

    ☆心不全

    心不全は心臓の機能障害によって息切れ、浮腫、倦怠感などの症状を呈するもので、心不全を引き起こす疾患には高血圧、心筋症、不整脈、弁疾患、先天性心疾患などがありますが、歯科治療のなかで、これを悪化させるものに、痛み、ストレス、局所麻酔薬に添加されている血管収縮薬などありますので、痛くなく、ストレスのかからない血管収縮薬の含まれない局所麻酔薬の使用が悪化を予防することになります。

    また、弁疾患で血栓予防のためにワファリンなどの抗凝固薬を使用している場合は、止血しにくいことがありますので、抜歯などの処置は整った施設で行った方が安全です。ただし、ワーファリンを中止しなくても抜歯が出来るケースも多いので、主治医に相談してみて下さい。

    ☆感染性心内膜炎

    心臓弁およびその周囲組織に感染巣を作る病気で、血管中に細菌などが混入し、心臓内部に感染することにより起こります。多くは心臓弁膜症や心室中隔欠損症などの心臓疾患を持っている方が罹ります。また、人工弁、糖尿病、放射線療法、抗癌剤、免疫抑制薬による感染防御能の低下も誘因となります。

    病原菌としては細菌によるものが多く、真菌によるものも増加しています。菌血症の誘因としては、抜歯、歯科治療がもっとも多く、その他、呼吸器、泌尿器科、産婦人科の疾患や、外科処置によっても起こりますが、誘因がはっきりしないものが半数以上です。抜歯後に細菌感染が起きると、症状を悪化させることがあります。しかし、逆に歯の周囲の慢性炎症が心内膜炎の誘因となることもありますので、むしろ抜歯が必用となる場合もあります。

    ☆心臓弁膜症

    心臓には僧帽弁、三尖弁大動脈弁、肺動脈弁の4つの弁があります。各弁は血液を循環させるために非常に大切な働きがあります。この弁の働きが損なわれる病気が心臓弁膜症です。心臓弁膜症には、狭窄症と閉鎖不全症がありますが、頻度が多いのは僧帽弁と大動脈弁です。原因には、先天性と後天性があります。後天性のものにはリウマチ熱が原因になるリウマチ性心臓弁膜症が代表的ですが、ほかにも細菌性心内膜炎があります。

    人工弁置換術後にはワルファリン療法により、血液が正常人の固まる時間の2~3倍の時間をかけないと固まらないようにします。従って、抜歯をすると止血しにくくなるため対策を立ててから抜歯をすることになります。

    ☆先天性心疾患〔心房中隔欠損症(ASP)、心室中隔欠損症(VSD)、肺動脈狭窄症(PS)、動脈管開存症(PDA)、フアロウFallow 四徴症(T/F)など〕

    生まれつきの心臓構造異常を先天性心疾患と呼びますが、生まれつきの心臓病でも、生まれてすぐに症状が現れるわけではなく、その症状は病気の重さによって異なり、同じ診断名でも必ずしも同じ症状を示すわけでもありません。治療後は、いずれも心不全の状態で無ければ抜歯は可能です。

    抜歯に関しては、菌血症に対応するために、抜歯前後に抗菌剤(抗生物質)の内服が必要です。しかし、抜歯前後の抗菌剤服用は意味が無いという考えもあります。

    今回はここまでとさせていただきます。次回は「成人期の抜歯・麻酔Ⅲ」となります。