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血液疾患と歯科治療 ─全身疾患と歯科治療⑩

著者:デンタルオフィス湊

こんにちは。
院長の荒内です。

今回は血液疾患と歯科治療です。
歯科治療と血液疾患で気を付けなければならないことは、何と言っても止血ができるかということです。
抜歯や切開等の手術後、血が止まらなければ、深刻な事態を招きます。
血が止まりにくくなることを出血傾向(出血性素因)があると言います。
出血傾向の目安は、出血後3分30秒以上止血しない状態をいいます。
血が止まらなくなる原因は大きくわけて3つあります。

1 血管壁に問題があるとき
2 血小板に異常があるとき(血小板数の量的異常と血小板の機能低下による異常)
3 血液凝固の仕組みに異常があるとき

ここでは、血液に関してですから、2と3についてお話したいと思います。

血液は、赤血球や白血球、血小板等の血球成分と、それ以外の血漿(血清)に分けられます。
出血傾向は、血小板の数が減少すると起こります。
血小板数は5万/μl 以上あれば出血の危険性は少ないと言われています。
血小板数が3万/μl – 5万/μlでは要注意です。
1万/μl 以下では、かなり危険な状態だと考えられます。
血小板の量的異常の主な疾患としては、突発性血小板減少性紫斑病や血小板無力症が挙げられます。
血小板の減少による出血は、皮膚や粘膜(歯肉、口腔粘膜、鼻粘膜など)に、点状、あるいは斑状出血、すなわち毛細血管からの出血が特徴的です。
血小板の量的異常である突発性血小板減少性紫斑病は決して少なくない疾患です。
患者さんは、他の疾患と違い、比較的元気な方が多いので、歯科医は常にこの疾患を見落とさないよう、しっかり念頭に入れておかなければなりません。
また、血小板機能とは、凝集能や粘着能等の機能を言います。
これらの機能が低下すると、やはり、出血傾向が起こります。
血小板の機能低下としては、血友病A(第Ⅷ凝固因子欠乏症)や血友病B(第IX凝固因子欠乏症)及びフォンウィルブランド病(フォンウィルブランド因子欠乏症)当の病気が挙げられます。
血小板機能低下による血友病等は、関節腔や筋肉内、内臓等、体の深部で比較的大量出血を見ることが多いです。
また、蛇足ですが、 以前、血友病やフォンウィルブランド病の患者さんからたくさんの薬害エイズ患者が出たことがありました。
これは、血液凝固障害の治療として、HIV汚染血液製剤が患者さんに投与されたために起こりました。

話を戻しますと、血小板が少ない患者さんは血小板を補充しなければなりません。
しかし、血小板の輸血を繰り返していると、体内に抗体が作られてしまいます。
抗体ができると、補充した血小板は約1日でもとの血小板数まで減少してしまいます。
ですから、抜歯や切開当の手術をするときは、担当医の先生と相談の上、計画的にしなければなりません。
また、白血病や骨髄腫、悪性リンパ腫等のいわゆるがん患者さんは、化学療法を受けていることが多いので、注意が必要です。
化学療法を受けると、骨髄の働きが抑制されてしまいます。
そうすると、感染しやすく、止血しにくくなってしまいます。
口腔粘膜は、傷つきやすくなり、赤血球数の減少もあって、治りにくくなります。
ですから、化学療法をする前に歯の治療を終えておく必要があります。
もし、歯科治療前に化学療法が始まっている場合は、専門医と協議しながら、血液検査値の回復を待って、歯科治療をします。
骨髄異形成症候群では、血液を造るもととなる細胞自体に異常が起こる病気です。
通常の貧血治療に反応しない貧血や血球の形成異常、血球の生成途中での血球の崩壊、前白血病状態などを特徴とします。
止血に十分な数の血小板があっても、血小板の止血機能の低下により、抜歯後、止血困難が起こることがあります。
この病気の確定診断は血液の専門医による骨髄穿刺等により行われます。

最後に投薬について説明させていただきます。
抜歯後や切開等の観血処置(出血を伴う処置)後に痛みどめを処方しますが、アスピリンやその他NSAIDs(ステロイド剤以外の痛みどめ)は血小板の凝集機能等を低下させるため、出血傾向のある患者さんに投与するときは要注意です。
数は多くありませんが、これらの痛みどめが血小板減少症の直接の原因になることもあります。

院長:荒内