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介護を必要とする場合の口のケア ─介護を要する方の為に

著者:デンタルオフィス湊

おはようございます。新潟県と山形県に大きな地震がありました。津波警報も出ましたが、大きな被害が無くて何よりですね。でも、梅雨に入っていますから両県共、地盤が緩んでいて土砂崩れが心配ですね。私達も気を引き締めて防災について、準備をしたいと思います。
今回は、熱田がコラムを書かせて頂きます。前回の続きです。
「続・介護を要する方の為に」
【介護を必要とする場合の口のケア】

5、誤嚥予防と食物形態

食物の形態を工夫する事で、むせが減ったり、誤嚥が予防できたりする事があります。
(1)もっとも嚥下しやすい性状は、噛み砕いたり舌で押し潰す必要が無く、姿勢の工夫だけで(後述の「姿勢・体位について」参照)咽頭方向に食物を送る事ができるものです。
具体的には、ヨーグルトであるとか、裏ごしして粒が入らないようにした性状です。このとき注意したいのは、水分が多くなりがちなことです。水分が多いとサラサラし過ぎて口腔内に溜めておく事が難しく、咽頭へ流れ込んでしまい、誤嚥やむせを助長してしまうことになりかねません。
(2)次の段階の嚥下し易い性状は、舌で押し潰すことができて、更に舌でまとめやすい性状であることです。
たとえば、豆腐やプリンのようなものですが、肉や魚でもミキサーにかけて味付けをし、ゼラチンで固めれば、食感もよく、飲み込み易くなります。
寒天やコンニャクのように表面が滑らかでも、しっかり噛んで舌でまとめなければならないものや、鳥のささみのようにパサパサとしていてまとめにくい物は、嚥下しにくい食品です。
その他の特記事項として、病気したことを境に嗜好が変わることがあります。酒好きだった人が、酒の匂いすらかぐのも嫌だと言うようになったり、孫の食べていたグラタンやシチューを口に運んだら次々と飲み込み始めたということもあります。病気前の嗜好にこだわることなく、色々なメニューを試してみてください。
また、飲み込みの反射(嚥下反射)が起きやすいのは、冷たい物です。体温ぐらいですと、刺激が乏しい為になかなか反射が起きません。熱い冷たいにかかわらず、溶かすだけでヨーグルト状のとろみがつけられる増粘剤も市販されています。

6、摂食・嚥下障害と食事介助

全身的な機能が低下した人にとっては、食事動作もかなりの運動です。そこで、考えられるのは、食事前の準備運動です。ここで「摂食障害に対する口腔ケアの基礎的訓練(機能面へのアプローチ)」をご紹介いたします。
(1)リラクゼーション
摂食障害の人は口腔以外に首、肩、背中、腰が硬くなっている為に、まずリラックスをはかります。首、腰の横向き、前後屈、回旋。肩の上げ下げ、回旋。上肢の伸展、屈曲。首から肩、背中にかけてのマッサージなど。
(2)異常感覚の除去
口腔内の感覚が過敏、消失、あるいは鈍麻になっていることがあります。過敏がある時は、いきなり歯ブラシではなく、最初は、指先で歯肉や頬内面に触れ、それが大丈夫であればスポンジブラシ、軟毛ブラシ、そしてナイロンブラシへと、徐々に硬くして、感覚の異常を無くしていきます。
(3)咳嗽訓練
摂食障害のある場合は、うまく飲み込むことよりも、まず上手に吐き出す事が大事になってきます。患者さんが息を吐く時のタイミングをはかって一気に咳をする訓練をします。
(4)筋刺激訓練
口腔に麻痺が残れば、食事や会話動作が極端に減ってしまいます。これを放っておけばますます筋肉は硬くなってしまいます。そこで、電動歯ブラシ振動を唇や頬の内側、又は歯肉は舌にあてて血流を盛んにし、筋肉の拘縮防止を試みます。
(5)筋ストレッチ
上記と同様に、筋の拘縮を防止する目的で唇や頬を人差し指と親指で伸ばしたり、縮めたりします。また、舌を前方後方、左右に突き出す動作をします。自分でできない場合は、人がガーゼで舌をつかみながら行います。
(6)筋力増強訓練
割箸などを何度も噛ませたり、木片のスプーンや舌圧子で舌を抑え、本人にそれを押し返す動作をさせたりします。
(7)ブラッシング(口腔清掃)
歯垢、歯石、食渣(食べカス)が停滞しやすい部位は、①歯頚部(歯と歯肉の境目)、②歯の裏側、③歯間部(歯と歯の間)です。歯ブラシの毛先を、いかにこの3つの部分にタッチさせるかがポイントです。時にはフロスや歯間ブラシも有効です。摂食障害患者の場合は、毎食後行うのが理想です。毎食後できない場合は、少なくとも就寝前だけは必ず行うようにします。
以上のような基礎的訓練を行ってみてください。食事への意識の覚醒や、食事がスムーズになることが期待できます。
食事中においては口の中は綺麗でも、まだ食物が喉に残っていることがあります次々と食事を口に運んでしまうと喉の奥が容量オーバーとなり、誤嚥をしてしまうことが考えられます。そこで、新たに食物を口に運ぶ前に、1、2回空嚥下をさせます。こうして食物を喉から完全になくなるようにしてから、次の食物を運ぶようにします。
空嚥下はだんだんやりにくくなるので、ティースプーンに半分くらいの水を飲んでもらいます。これは見ずに咽頭に溜まった物を洗い流すつもりなのではなく、あくまでも空嚥下をし易くするためのものです。
又、右下を向いて空嚥下をし、次に左下を向いて空嚥下します。さらに首を後方へ伸展させ、それから前屈してうなずくような形で空嚥下します。こうすると、部分的に喉の食物通路が広がりますので、たまった食物をきれいに飲み込むことが出来ます。
以上の事を毎回、口に運ぶたびにしていたのでは、本人も介護者も疲れてしまうかもしれません。3回食物を口に運んだら1回の空嚥下をしたり、声がガラガラ声になってきたときに、手を休めて空嚥下をさせるなど適宜行うのがよいと思います。
むせた時は、あわてない事です。介護者は手をカップ状にして、後頭部の下あたりや胸を軽くリズミカルにポンポンポンと叩いてあげます。むせは、吐き出そうという防御機転が働いている証拠ですので、悪い事ではありません。
その他にも、食物の性状や食事姿勢を工夫しながら機能の減退を補います。

7、姿勢・体位について

食事の姿勢や、もちろん座位が基本です。要介護者の生活のメリハリをつけるためにも、ベッド上ではなく食卓で食事をするよう努めたいものです。
座位での注意点は、
①前かがみになり過ぎない事です。前かがみになりすぎると、腹筋が使いにくく、呼吸がしにくくなります。すると、むせやすくなるので、背中と背もたれの間にマットをはさんで、背筋をある程度伸ばすよう心がけます。
②麻痺のある場合は、麻痺側に身体が傾きがちなので、肘掛けと体の間にマットを当てて傾斜を防ぎます。麻痺した上肢もだらんと下げたままではなく、膝上やテーブル上に置きます。
③背もたれに寄りかかるのは良いのですが、のけぞるようになって、首が後方に伸びてしまっていると、嚥下時の喉の上下運動がしづらいので、誤嚥や窒息を引き起こしやすくなります。介助者は、本人と同じ高さの目線にして、首を後ろに反りかえらせる事なく、介助してあげてください。
さらに、介護をしていると、座位が確保出来なかったり、なかなか飲み込めなかったり、あるいは胃瘻などの経管栄養であっても味をたしなむ程度に口から食事をしてみようといった場面に遭遇します。このような時は、食事の体位を工夫してみます。
30度の仰向け(仰臥位)をとれば、重力の関係で口から食事がこぼれ出ることは無くなり、喉の方向へ食事を送り込みやすくなります。解剖学的にも気道より食道が下になりますので、気道へ誤って食物が運ばれる確率も少なくなります。また、枕を使って頸部を前屈させます。これは、喉から気管への通路が屈曲する事により誤嚥しにくくなるからです。
片麻痺のある方で、どうしても寝たままでなければ無理な場合は、麻痺していない側を下にした横向き(側臥位)の状態にします。重力の関係で麻痺していない側の口や喉に食事が向かいやすくなり、誤嚥しにくくなるからです。そして、飲みやすくなるようなら、徐々に体を起こして座位に近い状態にもっていきます。
今回はここで終わりとなります。次回から「要介護者に起きやすい、食べる機能の障害と食事の問題」を書かせて頂きます。