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乳歯と歯肉に起こるトラブルについて ─妊娠期と乳幼児の歯と口腔内の特徴 37

著者:デンタルオフィス湊

おはようございます。寒い、寒い、と言っている間に、いつの間にか、春らしい気温になってきましたね。ウエザーニュースの千葉の桜の開花予想は3月23日だそうです!来週には、もう桜が咲くのですね!それは良いのですが花粉の量がすごいことになってきました!ううっ、苦しい!頑張らねば!
今回のコラムは、院長先生の番です。
第37回です。今回は
「乳歯と歯肉に起こるトラブルについて」

1、歯が折れた時。

幼児の転倒、落下或いは顔面強打によって、歯冠(歯の頭の部分)や歯根(歯が骨の中
に埋まっている部分)が折れることがあります。
歯冠だけの破折では、歯髄(神経や血管等)が露出していれば、出来るだけ急いで治療しなければなりません。殆どのケースで神経を取る処置をします。歯髄が露出していなければ、歯科用樹脂(接着用レジン)で修復します。ただし治療後に痛みが出て神経(歯髄)を除去することもあります。神経は出来るだけ残した方が良いので、二度手間になる時もありますが、ファーストチョイス(第一選択)としては、接着性レジンを充填します。仮に歯髄を除去することになったとしても、歯髄を全部取らず歯根部の歯髄を残すこともあります。これを生活歯髄切断法と言います。余談ですが、生活歯髄切断法を行うのにFC(ホルマリンクレゾール)を使っていましたが、アメリカではペリオドン(根管内消毒と残髄歯髄の失活剤)と共に、使用してはいけない薬として、使用が禁止されました。日本でも近いうちに使用禁止になると考えられます。
歯根が破折したときは、そのまま様子をみたり、治療する事もありますが、乳歯では抜歯する事が多いです。

2、歯を脱臼した時。

歯の脱臼には、様々な程度があります。歯がブラブラする程度から、完全に抜けてしまう「完全脱臼」のものまでを脱臼と言います。乳歯の脱臼は、1才から3才児に多く、永久歯では6~8才の学童に多発します。脱臼に関する治療に関して、大雑把にお話しします。歯に亀裂や欠けた時は、前述の通り、歯科用樹脂を接着します歯の動揺が激しい時や位置がズレたり、挺出したり」、捻じれたりした場合は、正しい位置に戻して、動揺の無い歯と連結して固定します。めり込んだ時は、とりあえず経過観察します。歯髄が露出したときは、出来るだけ歯髄を保護する為の治療をします。保存が不可能だと判断されれば、麻酔をして歯髄を除去します。状態によっては、歯冠部の歯髄だけ除去して、歯根部の歯髄を残します。いずれにしても、永久歯へのダメージを最小限にとどめ、生える位置が正しくなるように考えながら治療をします。そして、大事なことはシッカリ予後を観察する事です。

3、歯が抜けてしまった時。

①永久歯との交換機に抜けた時は、まもなく永久歯が生えて来ますから、治療の必要はありません。乳歯の脱落の時期には個人差があります。5才頃に脱落する子供さんもいます。また、健康な乳前歯が1,2本、交換のために早く抜けることがあります。いづれも、そのまま様子をみて下さい。
②子供さんの悪癖や全身疾患で乳歯が抜ける事があります。
悪癖の例としては、歯と歯茎の間に爪やスプーンの先端を、いつも当ててる子供さんがいます。或いは、小さな輪ゴムやビニールの輪を噛む癖があって、それが運悪く歯と歯茎の間にスッポリはまって、やがて下顎の乳歯が抜けてしまった例があるそうです。子供さんのストレスを為害性の無い方法で発散させられるように工夫してあげて下さい。次に全身的な病気の為に乳歯が脱落することもあります。例えば「先天性掌蹠角化症」、「無カタラーゼ血症」、「低ホスファターゼ症」等の全身疾患は、歯肉に病気を起こし、早期に、たくさんの乳歯が脱落してしまいます。
③事故や転倒で乳歯が抜けてしまった時。
乳歯が完全に脱落(完全脱臼)してしまった時は、抜けた歯を水道水で洗わず、歯ブラシで擦ったりせず、すぐに保存液化、もし無ければ牛乳かお茶の中に入れて出来るだけ早く歯科を受診されてください。以前は乳歯の再植は禁忌でしたが、最近は永久歯の交換時期や脱落した乳歯の状態、そして、乳歯が生えてた所(ソケット)の状態等を総合的に考慮した上で、再植をする事もあります。ですから、もし歯が抜けても捨てずに、保存液に入れて出来るだけ早く歯医者さんに診てもらって下さい。脱落しを保存する為の液が、多くの学校で用意されてると聞きます。また最近では、保存液が通販で売られています。例えば「教林出版学林舎楽天市場店」、「ドラッグピュア楽天市場店」、「神戸たんぽぽ薬房」等から1,400円から3,500円位で売られています。
もし、事故や怪我等で歯が抜けた時は、汚れを落とす為に、水道水で洗ったり、歯ブラシで擦ったりしないでください。とにかく、1秒でも早く保存液の中に入れて下さい。保存液が無ければ、冷えた牛乳かお茶の中に入れて下さい。もしそれらも無ければ口の中に入れて一刻も早く歯科を受診してください。脱落後1日以内であれば、再植が成功するかもしれません。

ここで2つトピックを御紹介したいと思います。

1つ目は、移植を目的として、歯を保存しておく「ティ―スバンク」です。これは将来、歯を失った時、そこに保存しておいた歯を移植します。バンクに預けられるのは移植を受ける人の歯だけです。つまり別の人への移植はできません。費用は初年度は約3万円です。保存のための費用は、約1万5千円です。5年間に1回の支払です。そして移植する時の費用は約4万円かかります。

2つ目は、「歯の細胞バンク」です。歯髄の中に、いろいろな細胞になれる幹細胞(Stem Cell)が含まれている為に、乳歯や永久歯(親不知や矯正の時に抜いた歯等)を保存するようになりました。
幹細胞には「自己複製能力」と様々な細胞に分化する能力、いわゆる「多分化能力」の2つがあります。幹細胞は「胚性幹細胞:Embryonic Stem Cell」、「成体幹細胞:Tissue Stem Cell」、「ips細胞:induced Pluripotent Stem Cell」の3つがあります。「胚性幹細胞;Embryonic Stem Cell」は受精卵後、胚盤胞の段階で発生した胚から分離された幹細胞です。ですから、「成体幹細胞:Tissue Stem Cell」のように多分化能が限定的ではなく、正に万能細胞と呼ばれるように、ほぼ全ての組織(細胞)に分化できます。ただし、受精卵を使う為に倫理的に社会的に問題となっています。そこで2006年に、京都大学の山中伸弥教授により、ips細胞が発明されました。これは、体細胞から幹細胞を作り出したもので、倫理的な問題が解消されました。ここで注目している「成体幹細胞」ですが、これは骨髄や臍帯血、歯髄の中に含まれている幹細胞の事です。始めは、1990年位に骨髄中の幹細胞が発見されたそうです。その10年後くらいに歯髄中の幹細胞が発見されたそうです。幹細胞は、怪我をした時に、そこに集まって傷を治してくれる細胞です。ですから体中にあります。それらの中で、歯髄中の幹細胞が最も注目されています。その理由は、幹細胞が集めやすいという事です。また、増殖するスピードが速く、様々な細胞に変化する能力も高く、ips細胞の作成のも適している為に注目されています。今後、これらの再生医療が進めば、抜けた歯をインプラントや入れ歯、或いはBrにする以外に歯が生えて来る再生医療も選択肢の1つになるかも知れません。
今回はここで終わります。次回は、「歯肉について」お話しします。