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総入れ歯のトラブル ─高齢期になって現れやすい歯と口の病気8①

著者:デンタルオフィス湊

おはようございます。天気の良い日が続いています。湿度も低く秋めいた日和が続いています。そろそろインフルエンザのワクチンを打つ時期でもありますね。今年も上手くインフルエンザを回避すべく、私達もつい先日、打ってきました。皆様も是非ご一考ください。
今回のコラムは熱田が書かせて頂きます。
「高齢期になって現れやすい歯と口の病気8①」

「総入れ歯のトラブル」

1、 総義歯(入れ歯)を装着したり、取り外すとき痛む

義歯の床(義歯の粘膜面を覆う部分)が大きいほど義歯は安定しますが、床縁(床の縁の部分)が長すぎたり厚すぎたりすると痛みが発現します。又、薄すぎてもよくありません。床縁が、鋭くなっている時も痛みます。鋭い部分を削ってもらうか、薄くなっている辺縁部に床材料の常温重合レジン(合成樹脂)を付け足してもらって、丸みを持たせると良いでしょう。義歯を手指で固定して、口を動かしてみると痛む部分が判ります。
今までずっと小さい義歯を入れていた方や、人工歯もかなり減ったまま使っていた方、又、ご高齢の方や上下がズレて噛んでいるような方が、急に型を採って新義歯を作り装着した場合に、口唇の張りや、周りの筋肉がついていけずに、なかなかなじめません。このような方には、次のような義歯の作り方を行います。

1 通常は、今まで使用してきた義歯を使って、徐々に口の周りの筋肉を伸ばしながら形態を変えていきます。又は、
2 今まで使用してきた義歯をコピーして、「複製義歯」を作ってそれを使用するか、
3 義歯のない方には新義歯を、作ってそれを使用しながら快適な状態に仕上げていく方法もあります。

このような義歯を「治療義歯」と言います。人によって違いますが、通常2~4週間、長くて2~3ヶ月トレーニングをして、なじんだ後に新しい義歯を作ります。そうする と、装着したり取り外すときに痛むことはありません。
丁度良い大きさの義歯とは口の中の咀嚼筋や舌や口腔周囲組織を阻害しないような義歯と言います。どちらかというと、皆さんが考えている義歯よりは少し大きめです。ですから、義歯を装着したり取り外すときには、義歯を少し横向きにして左右一方の側から出し入れするようにします。

2、 義歯で噛むと痛む

床下粘膜(義歯が乗っかる歯ぐき)の痛みは、粘膜に傷が発現するために生じます。痛みの原因が粘膜と接触している義歯床にある時は、そこの部分を削合します。これによって、一時的に痛みが消えてもまた痛みが発現することが結構多くあります。しかし、粘膜と接触して痛みの直接的な原因となるのは、

1 咬合による義歯の移動。
2 あるいは義歯床が長すぎて床周囲軟組織の運動を妨げてる時。
3 加圧による過重負担

などが考えられます。ですから、義歯床の形や咬合状態、咬合高径、人工歯の配列位置が適正かどうかを調べてもらいましょう。
義歯の調整を何回繰り返しても、床下粘膜の痛みが改善されないこともあります。その原因が義歯ではなくて、患者さん側に問題がある場合もあります。例えば、顎堤(口の中で隆起した土手の部分)の形態がフラットあるいは凹型などのような劣形であったり、粘膜が脆弱で咬合圧に対応できなかったり、また義歯の使用方法が誤っていたりする場合です。顎堤の形態が劣形である場合、食事中に義歯が動いて痛みが出る事があります。義歯の移動が少なくなるように、咬合面の位置、咬合面の傾斜(奥から前方へ向かって少し傾斜する)、人工歯の位置(舌が楽に収まる位置)などを調整してもらいましょう。又、噛み方の練習も大切です。前歯で噛み切らないで、犬歯より後方の歯(小臼歯と第一大臼歯)を使い、第二大臼歯は使用しない様にしましょう。その為に、第二大臼歯を配列しない場合もあります。
義歯を長期間使用していると、咬合面(噛み合わせの面)は咬耗(長い間の噛み合わせにより、擦り減る現象)や摩耗(歯と物が摩れる事)により擦り減ってきます。
今まで噛んでいた場所も低くなって、下の顎を前方へ押し出して、上の歯に当たる噛みやすい場所を探して噛もうとします。その結果、前後左右に動いて横揺れしやすくなり、あちこちに当たりが出るようになります。当たりが出るたびに、そこをかばって、痛くない他の場所を探して噛むために、悪循環を繰り返えすようになり、どこで噛んでも痛むようになり、最終的には義歯を入れていられなくなります。
偏った噛み方をしていると、咀嚼側の咬耗が進んで咬合面が左右アンバランスになります。顎関節部はもちろんのこと、顔や姿勢のバランスが崩れ、肩こりや頭痛などいろいろな症状を引き起こします。
義歯は解剖学的にも、生理学的にも、必要最小限の部分を覆わなければいけません。特に化学のレトロモラーパッド(臼後隆起部)は大切な場所で、この部分を覆っていないと、噛むたびに顎堤粘膜(隆起した土手の部分の粘膜)を圧迫して、痛みが起こり、傷がついて潰瘍が頻発します。後部床面を延長してもらうと、義歯の維持、安定が良くなって、又、噛んでも義歯が沈まない為痛まなくなります。

3、 義歯に舌がすれて痛む

歯が抜けて無歯顎になると、上顎と下顎では骨の吸収(骨が無くなってくる現象)が起ってきます。上顎は外側の方へ、下顎は内側の方から吸収して行きます。人工歯は物理学的には顎堤の歯槽頂部(土手の高い部分)に置くのが一番安定します。しかし、上顎骨が吸収すればするほど、舌房(舌が口の中に納まる空間)が侵害されて狭くなり、舌がすれて痛むようになります。
顎堤が吸収されると、上下義歯の高さ(咬合高径)が低くなり、舌房が狭くなってきます。すると人工歯部鋭縁に舌が当たりすれて痛みます。又、舌を噛みやすくなります。
上顎前歯が舌側寄りに配列されると、舌尖に痛みが起こります。又、自分の臼歯より人工歯が舌側に配列されていると、舌の側縁に痛みが起こります。
対応としては、人工歯を外側に並べたり、人工歯の舌側を削除して小さくして、出来るだけ舌房を広くするようにします。
患者さんの歯が、上顎前突(上の歯列が前に出た状態)だった方では、上顎前歯部を、内側に配列することが殆どです。こういう場合は舌房が狭くなり会話時に舌が人工歯に接触して、痛くなることがありますので、咬合高径を少し上げてもらうか、人工歯部を少し外側(唇頬側)へ移動してもらうと良いでしょう。
また、長期間義歯を入れないで外しておいた場合は、舌が大きくなります。これは舌が咀嚼機能を代行して筋組織が肥大するからです。舌房を確保した義歯を入れることによって徐々に元の大きさになっていきます。

4、 義歯(入れ歯)を入れると唾液が出る、頬を噛む

義歯は天然歯が無くなって引っ込んだ口唇や頬を張り、出来る限り自然な顔貌になるように、天然歯が元あった位置に近づけて人工歯を並べ、(床辺縁)の調整を行います。初めて義歯を使用する方は、通常2~3週間は使いにくいのが普通です。初めのうちは、唾液がたくさん出てきたり、吐き気がしたり、しゃべりにくかったり、、噛みにくかったり、頬や舌を噛んだりします。
唾液は、通常1~2時間もすると元に戻ります。又、頬を噛むことがあります。これは長い間、義歯を入れていなかった場合や、義歯を作り変えたとき、あるいは噛み合わせが低くなったまま使用していると起こります。これは、舌や頬が膨らんで顎の動きによって、どちらか一方の頬を噛んでしまいます。こういう場合は、少し口を膨らませたり、食事の時に噛む側の頬を指で外側に引っ張りながら食べて下さい。そのうち、噛まなくなります。
話し方も、最初は変な感じがするかもしれません。慣れるまでは、一語一語ゆっくり声を出して新聞や本を読んでください。口が渇く場合は、コップの水を含みながらやってください。
今回はここまでにさせて頂きます。次回も「高齢期になって現れやすい歯と口の病気8の②」を書かせて頂きます。