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総入れ歯(総義歯)歯がすべてなくなった場合の機能回復 ─「高齢期になって現れやすい歯と口の病気7

著者:デンタルオフィス湊

おはようございます。今週の初めにも台風が通り過ぎました。地震に台風、ゲリラ豪雨、竜巻、etc.自然の驚異にはまだまだ人間は翻弄されてしまいます。という訳で、遅ればせながら。我診療所も防災グッズを揃えることにしました。しかし、自分が考えることは他の人も同様で、防災グッズも申し込み多数で3~4か月待ちの状態です。
今回は熱田がコラムを書かせて頂きます。
「高齢期になって現れやすい歯と口の病気7」
「総入れ歯(総義歯)歯がすべてなくなった場合の機能回復」

1、 義歯(入れ歯)の種類と材料

いわゆる義歯には、一部は自分の歯が残っていて、失った歯の部分に入れる義歯を「部分床義歯(部分入れ歯)」、一方、全て自分の歯を失ってしまった場合に入れる義歯を全部床義歯あるいは総義歯(総入れ歯)と言います。
部分床義歯(部分入れ歯)の場合は、なくなった歯の本数により入れ歯の形は様々になります。総義歯の場合には、義歯床と言われる部分に使用される材料に金属と歯科用レジン(アクリルレジン)があり、それぞれ(金属床義歯」、「レジン床義歯」と言います。
一般的には、加工性とコストパフォーマンスの良い(保険が適応できる義歯)レジン床義歯が広く使われていますが、強度が劣る、違和感が強い、審美性に欠ける、飲食物の温度変化が判りにくい、と言われています。
金属床義歯の特徴としては、レジン床義歯と比べて、強度があり破折、変形、たわみなどの恐れが少ないので薄く仕上げる事ができ、違和感を少なくすることができます。又、熱の伝導性が良いので、顎の粘膜の感覚や味覚を感じやすいなど、良い影響も期待できます。しかし、製作コストの面からみると高価になってしまいます。(保険適用外)
鋳造床用に使われる金属も何種類かあって、「コバルトクロム合金、金合金、チタン」などがあります。
現在は、器材の目覚ましい発達のよって精度も向上していますので、金属床義歯の良い点を生かした義歯が作られています。

2、総義歯は歯の根は全て抜くのですか?

残っている歯の根(歯根)の状態(グラグラしているか、周囲の歯肉は腫れていないか)、残っている歯の場所、数、あるいは患者さんの全身的健康状態(糖尿病、心臓疾患、高血圧症など)はどうかなどにより、抜くか、残すかを診断します。又、噛み合わせのバランスを考慮した場合、全て抜いたほうが良いこともありますので、抜歯か残すかは一概には言えません。
現在は、もししっかりした歯根がある場合、磁石を歯根につけて義歯をしっかりと安定させる方法もあります(磁性アタッチメント、と言います)。又、顎骨の吸収を少なくする為に歯根を残し、その上を義歯で覆う方法もあります。
具体的にどうするかは、主治医の先生とよく話し合うと良いでしょう。

3、歯の寿命はどれ位ですか?

一般に義歯(入れ歯)は時間の経過と共に人工歯が擦り減ったり、顎堤(あごの骨)も吸収(減る)して合わなくなります。この現象は止めることは出来ません。減り具合には個人差がありますが、平均的には4~5年経過すると緩く感じるようです。この時に、人工歯の減り具合、顎堤との適合具合を検査して、義歯を再適合させます。又、人工歯の減り具合によりますが、噛み合わせの調整ですむ場合や人工歯を全て入れ替える場合もあります。
入れ歯も歯周病と同様に定期検診(6ヶ月あるいは年に1度)を受けることにより大きな狂いを生じることなく使うことができます。結果として義歯の寿命が長くなると思います。そして、それは顎の変形を極力少なくしていくことになります。
また保険の義歯用アクリルレジンは2年間持てば良いと決められている位の強度しかありません。

4、話しやすい義歯とは?

総義歯を入れる目的は、失った組織の回復にありますが、具体的には痛くなく噛めるようになる事もう1つはしゃべりやすいことにあると思います。
そのために、しゃべるときに落ちない事が必要条件になり、歯科医院では義歯を作る時
噛み合わせの高さ、歯の位置、下顎(下あご)の位置などを、歯のあった当時(正常な天
然歯の歯並び)に近くなるように作っていきます。
最近は、いきなり本義歯を作るのではなく、治療用の義歯を作り、あるいは古い義歯
を改善して、発音(例えば、<さしすせそ>の発音は舌を前歯に接近させて発音する)の具合を見ていき、新しい義歯の作製の参考にする作製方法も多く行われています。そうすることにより、スムーズに話せるようになります。

5、義歯を入れるとどうして味が変わるのでしょうか?

口の中では味(味覚)を感じるのは、舌と上顎(上あご)粘膜部分に味覚センサーによる
と言われています。総義歯(総入れ歯)を入れるということは、上あごの粘膜を覆うように
義歯が入ることになり、味を感じる部分を塞いでしまいます。このような理由から、に変
化を生じるようです。
又、義歯というものは本来異物ですから、この異物感がなかなか無くならず、食感が
悪く味を感じないこともあるようです。
しかし、顎の骨(いわゆる土手の部分=歯が生えていた部分)がシッカリ残っている場
合には、口蓋部分(上顎の粘膜部分)を覆わない無口蓋義歯という方法で作ることもできます。
この方法ですと、義歯床で覆われる部分を少なくすることができますから、味を感じる
所が多くなりますので、かなり味覚に対する効果は期待できると思います。

6、歯の色や形を自分の好みで注文できるのですか?

人の歯の形は色々ありますが、特に前歯部(前の歯)の形はその人の顔の輪郭を上下逆にさせたものに似た形態をしていると言われ、おおよそ方型、尖型、卵円型の3種類に分けられると言われています。
実際には、それほど明確に分けられるものではありませんが、確かに面長の顔の形をした人に短い歯は合いませんし、丸顔の人に長い歯も合いません。前歯の場合、顔の輪郭にほぼ合わせた形の歯を選択した方がバランスもとれて見た目にも自然に近くなるようです。又、体つきから見て、男性はシャープな形の歯が、女性は丸みのある葉が合うようです。
もし、自分の歯が有った時の写真があれば参考になりますので、主治医の先生に見せるとよいと思います。歯の大きさに関しては、専用のスケールで計測し、一番近い寸法の人工歯を選択する方法もあります。
歯の色に関して顔の皮膚の色や、年齢、職業などを参考に決めていきます。例えば、皮膚の色が黒っぽい方の場合に白っぽい歯を使うと、歯だけが浮いて目立ちすぎることになりますので、やや黄色みのある歯の方が合いますし、逆に色白の方には黄色みのある歯は合いませんので比較的白い歯を使用します。
以上のようなことを加味しながら人工歯を選んでいきますので、よく先生と話し合って決めていくのが良いのではないでしょうか。

7、義歯を作る事を進められましたが?(まだ、食事をするのに不便がないのに何故ですか?)

義歯を入れる目的はただ噛める義歯を作るだけではなく(もちろん噛めることは大事なことですが)、失った組織の回復にあります。
元来、歯の良い噛み合わせには、咀嚼はもちろん、良い発音、良い嚥下(飲み込み=唾液の分泌)、良い呼吸、良い顔貌、更に二本足で立っている時の良い姿勢の保持、など全身の健康にも関係しています。
従って、総義歯を入れていることで、歯が有った時と同じような口の中の環境で過ごすことは、全身の健康に繋がりますし、若返ったような感じになります。
このような点からも、義歯を入れた方が良いのではないかと思います。

8、義歯でも定期検査は必要ですか?

一般的に定期検査と言うと、いわゆる虫歯(齲蝕)の検査や歯周病(歯周疾患)の検査を思い出されると思いますが、義歯においても定期検査は必要です。
あご(顎)の骨も、微量ではありますが年単位で少しずつ骨吸収(骨が無くなっていく状態)を起こします。これは生理的現象ですので、止めることはできません。そうすると、義歯が少しずつ合わなくなっていきます。更に、正しい噛み合わせも狂っていきます。その為に、義歯の吸い付き(吸着)が悪くなったり、噛み合わせに違和感を感じるようになっていきます。
そのような状態をチェック(検査)し、悪くならないうちに噛み合わせの調整や、義歯の修理法として裏打ち(適合法)などをすることによって、作った当時の良い状態に戻せます。従って半年に1度、空けても年に1度の定期検査をお勧めします。

9、義歯は就寝時は外すのですか?

基本的には夜間就寝時も義歯は入れていることをお勧めします。その理由は、生理的(天然歯と同じような)噛み合わせの確保であり、いわゆる老人性の顔貌でない自然な顔貌の確保にあります。呼吸も楽になると思います。涎が流れっぱなしになることも少なくなります。つまり、自分の歯が存在している口の中の状態を維持するためにあるわけです。
ですが、これには条件があります。それは義歯の粘膜面と顎堤粘膜面を食後、シッカリ磨く事です。そして、磨いている間清掃剤に義歯を浸けて機械的、化学的清掃を行います。
このようにすれば、就寝時義歯を入れている事で、顎の粘膜に為害作用を及ぼすことはありません。しかし、就寝時に義歯を入れていることがかえって苦痛に感じ、熟睡できずに睡眠不足になり、ストレスとなるようであれば、むしろ外して寝られる方が良いと思います。
ちなみに専門学会でも外すべきか、入れているべきか意見が分かれています。

10、義歯の清掃方法はどのようなものですか?

義歯の清掃方法には、専用のブラシを使って清掃する方法と、清掃剤に浸けておく方法があります。要は毎食後、自分の歯を磨く事と同じように義歯を手入れする事が大事です。
又、義歯だけではなく顎の粘膜も普通の歯ブラシで磨いてあげると粘膜が硬く強くなり、噛む力に対して抵抗がついていきます。又、義歯を不潔にするとカンジダ菌により顎の粘膜が赤くなるカンジダ菌症をおこしたり、肺炎の原因にもなりますので、義歯や口の中を清潔に、快適に使用できるよう、毎日、毎食後、必ず清掃して頂きたいと思います。

11、清掃剤は有効ですか?

基本的にはブラシで磨く機械的清掃をメインに、清掃剤の化学的清掃を加えて、より清潔にするという考えで義歯の手入れをしてください。義歯をブラシで磨かないと、清掃剤の効果は半減します。
義歯に使われているレジンという材質は吸水性があるため、様々な成分を吸収して不快な匂いがつくことがありますが、このような場合、酵素の働きで汚れや匂いを分解してくれるので、清掃剤は有効だと思います。清掃剤に浸けるのは義歯用歯ブラシで磨いた後、約5~6分(メーカーにより異なりますが)、清掃剤を入れた義歯用ケースに浸けてください。浸けてる間、口の中の粘膜も磨く事をお勧めします。

12、外した義歯はどうするのですか?

外した義歯を入れる専用の容器がありますので、外したら必ずこの容器に入れて保管する習慣をつけると良いと思います。
よく、ティッシュなどにくるんで、その辺に置かれてしまう方がいるようですが、家族の方が知らずに捨ててしまったり、本人でさえも忘れて捨ててしまうことがあるようですので、専用の容器を持たれることをお勧めします。
なお、義歯を容器に入れる時は必ず水を入れてください。義歯は乾燥すると変形する恐れがありますので、注意してください。

13、義歯での食事の注意点は何ですか?

一般的には特別注意することは無いと思いますが、1回に口に入れる食物の大きさはすこし小さめにし、量も少なめにして噛む方が安定して噛めると思います。又、顎堤(あごの骨)の良くない方の場合にも、1口の量は少ないほうが良いと思います。
一方、噛む場所ですが、いわゆる奥歯(臼歯部)で噛むと安定して噛めると思います。義歯の場合でも、一口約30回位噛むと、食物が細かくなり、消化されやすくなると思います。
今回はこれで終わります。次回は「義歯のトラブル」について書かせて頂きます。