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高齢期に起こりやすい歯と口の病気4、舌・その他 ─高齢者の歯と口の中の状態 10

著者:デンタルオフィス湊

おはようございます。今週も変則な動きの台風に猛暑日。ちょうど来週はお盆休みに入ります。暑さ負けしないよう、しっかり栄養補給や休養をお取りください。
今週は熱田のコラムを掲載させて頂きます。
「高齢期に起こりやすい歯と口の病気4、舌・その他」

(1)舌の表面が黒い

口を開けると見える舌の表面を舌背と呼びます。乳頭と呼ばれる密集した特殊な粘膜で覆われています。健康な舌背の粘膜は淡紅色です。
舌乳頭が伸びて、舌の表面にも毛が生えたように見えるものを毛舌と言い、様々な原因で白色から茶褐色や黒色になり、菌交代現象による口腔内細菌叢の変化が主な原因と考えられます。なかでも、黒色に見えるものを黒毛舌と言います。
特にカンジダ菌が異常に増殖して、黒色の色素を産生すると考えられます。抗菌薬やステロイド剤が誘因になることが多いようです。他には、タバコ、飲食物、有色の薬剤で舌に種々の着色を見ますが、胃腸障害、糖尿病なども背景にあるようです。原因が明らかでない事もあります。
症状はほとんど無く、鏡で見て気付く事が多く、口臭の原因となります。いずれも原因となりうる物を止めながら経過をみて、口腔内の清掃に努める事が肝心です。1~2週間様子をみても変わらない時は、医療機関を受診しましょう。

(2)舌の表面が白い

舌カンジダ症と舌白板症が心配です。
真菌感染により口腔粘膜に点状斑状の偽膜様白苔が生じているものを口腔カンジダ症と言いますが、義歯(入れ歯)の接触する粘膜などでは赤くただれたような状態で見られる事もあります。白色の偽膜の場合は容易に剥離され、露出した粘膜には発赤やビランが見られますが、慢性化すると偽膜は厚くなり、白板症と見分けがつきません。
抗菌薬やステロイド剤の長期内服や、免疫不全などで体の抵抗力が減弱している場合に発症しやすくなります。誘因を排除し、ヨード剤や抗真菌剤で十分にうがいする必要があります。医療機関を受診しましょう。
舌の粘膜に周囲よりやや隆起して不定形の白斑が生じ、摩擦しても除去できないものを舌白板症と言います。前癌病変(癌が生じる可能性の高い病変)の代表で高齢者に多く、放置すれば数%が癌化すると言われています。組織検査によって癌化の有無を検索する必要があり、時に外科的切除が必要となりますので、医療機関を受診しましょう。

(3)舌の表面がつるつる

舌の表面が赤く平らでつるつるした状態を、赤色平滑舌と言います。
舌全体がひりひりしたり、食べ物がしみたりして、味覚の異常や飲み込みにくさなどの症状を伴うこともありますが、舌乳頭の萎縮や消失のためです。
これは、鉄欠乏性貧血、ビタミンB12の欠乏によって起こる貧血(悪性貧血)、ビタミンB複合体欠乏症、ショーグレン症候群(口の渇き、眼の乾燥などの症状が現れる自己免疫疾患)などの全身疾患の口腔症状として現れます。
舌の炎症にはうがい薬や保湿剤などで対応し、同時に虫歯(齲蝕)や歯周病(歯周疾患)が悪化しないように、ブラッシングなどのケアが必要です。
原因に合わせて、鉄剤の投与やビタミンB複合体など、欠乏している栄養素の補給で病気は治りませんが症状は改善します。
ビタミンB12欠乏症は、(消化管からの吸収に不可欠な内因子が欠乏している)悪性貧血や胃全摘出術後に現れ、経口では吸収されにくいので注射での補給が必要となります。
つるつるの舌を見つけた時は、口腔ケアのための歯科、そして全身疾患の診断と治療のために内科の受診が必要です。

(4)喉に魚の骨が刺さった

喉に刺さった魚の骨を取るには、その場で咳をして刺さった骨を出してみようと試みるのも良いでしょう。呼吸ができるようなら、差し迫った生命への危険はないと思われます。
骨が刺さった場合、固形物と一緒に飲み込ませると更に深く粘膜を傷つける恐れがありますから、禁止されています。刺さっている箇所が化膿したり、痰などに血液が混じるようであれがば、深く刺さったことが考えられますので、急いで医療機関を受診しましょう。
通常は自然に取れる事もあるので、様子をみる事もあります。何らかの方法で除去しようとすると、口腔や咽頭を傷つけるので、無理をしない事です。しかし様子をみ過ぎると、刺さった所が腫れてきて取りにくくなることがあります。
異常を感じて治りにくいと思われる時は、医療機関で内視鏡などで除去することが必要となることもあります。口腔外科や耳鼻咽喉科などの医療機関を受診しましょう。受診時には、刺さったと思われる大きさの骨があると除去時の参考となりますので、持参してみることも良いでしょう。

(5)歯肉(歯ぐき)から時々出血がある

歯ぐきからの出血の原因には、局所的なものと全身的なものとがあります。
歯肉出血の原因の中で最も多いのは、局所の問題である歯肉の炎症です。歯石や歯垢(プラーク)の沈着から、歯肉に慢性炎症が生じて出血する歯周炎や細菌やウイルス感染による歯肉炎が原因です。歯科医療機関を受診しましょう。
又、止血機構や血管壁などの全身的な原因によって歯肉出血が生じる事もあります。血小板の破壊(特発性血小板減少性紫斑病)、生産低下(再生不良性貧血、急性白血病)機能異常(慢性骨髄性白血病、解熱鎮痛剤の長期服用)、ビタミンKの欠乏による血液凝固因子の減少(肝機能障害)、先天性欠乏(血友病)あるいは抗血栓薬などで起こる事もあります。特に白血病は、比較的早期に歯肉出血が出現する事があります。他部位の出血も伴うことがありますので、打ち身の覚えのないところ、例えば上腕の内側の皮下出血はないでしょうか。あるときは早めに医療機関に行きましょう。この様に歯科疾患が原因とは思われない歯肉出血は、医療機関で血液検査(末梢血、出血凝固検査)を受ける事が大切です。

(6)口の中・唇が乾く

高齢に成るに従い、唾液分泌は減少し、口腔が乾燥するようになりますが、これ以外にも口呼吸、唾液腺疾患(抗ヒスタミン剤、抗うつ剤など)の副作用、内分泌や代謝異常、日常的な不安緊張や怒りなどで口腔乾燥が生じることがあります。特に、糖尿病疾患者の口喝はよく知られています。
口の中を見て、下あご(下顎)の前歯の内側(舌側)に唾液の泡があるようであれば唾液の分泌は大丈夫でしょう。
乾燥が持続したり、進行すると、粘膜が荒れて出血しやすくなります。さらに、咀嚼や嚥下(飲み込み)だけでなく、味覚も障害され、会話も円滑に出来ず、義歯(入れ歯)の保持も難しくなります。口腔が乾燥すると虫歯(齲蝕)も出来やすくなります。
歯科口腔外科などの医療機関を受診して、唾液の量を測定してもらい、口腔乾燥の原因を突き止め、除去することが肝心です。
原因が分からない時など、対症療法として、食事を良く噛む事、人工唾液の使用、唾液腺ホルモン製剤や漢方薬の内服も効果があります。

(7)唾を飲むと痛い

この症状は、嚥下痛と呼ばれるもので、唾に限らず物を飲み込むときに生じる痛みです。多くは下顎大臼歯部、扁桃部、舌の後方部あるいは軟口蓋部(上あごの奥の軟らかい部分)に炎症ある場合に見られるものです。例えば、親知らず(智歯)、周囲の歯肉に炎症が起こる下顎智歯周囲炎や扁桃腺炎、扁桃周囲膿瘍、ウイルス性口内炎(ヘルペスウイルスやコクサック―ウイルス)などに見られる症状です。
これらは細菌やウイルス感染による炎症ですが、治療目的で下顎の親知らずや大臼歯を抜歯する事による機械的な刺激で起こる炎症でも見られます。
抗菌薬や消炎剤を服用したり、イソジンなどのうがい薬を用いる事により症状が改善するのが普通です。

(8)口の中に潰瘍がある

潰瘍とは、口腔粘膜上皮が欠損し、粘膜下組織が露出した状態を言います。
多くは炎症や外傷により生じますが、時に悪性腫瘍(癌)の症状として現れる場合もあります。炎症性のものには、孤立性アフタ、再発性アフタ、アフタ性口内炎、梅毒や結核などがあり、外傷性のものには、鋭利な虫歯(齲蝕)や義歯などが原因で起こる褥瘡性潰瘍があります。
アフタは、発赤と痛みを伴う米粒大の潰瘍で、普通1~2週間で自然に治りますが、ベーチェット病の部分症状として現れる再発性アフタやウイルス感染によるアフタ性口内炎がありますので、専門家による診断と治療が必用です。
褥瘡性潰瘍は原因を取り除く事により治りますが、なかなか治らない潰瘍が出来た時には、癌、結核、梅毒の鑑別が必要ですので、出来るだけ早く口腔外科のある病院を受診する事をお勧めします。

(9)食事の時、頬が痛む

食事は味覚による唾液の分泌が消化を助け、種々の筋肉と歯が食物を噛み砕き、飲み込むという一連の動作です。高齢者では唾液の分泌が低下すると共に、自分の歯も失われ、歯が無いままか、或いは義歯を入れて食事をする事になります。従って、義歯の不調により頬粘膜を誤って噛んだり、咀嚼筋のアンバランスにより、顎関節や咬筋に変調をきたしたりするために痛みを生ずることがあります。
又、頻度は低いのですが耳下腺炎や耳下腺唾石があるために痛む事も考えられます。

(10)口内炎が出来やすい

口内炎とは、一般に口腔粘膜全体に起こる炎症であり、歯肉だけのときは歯肉炎、舌だけのときは舌炎と呼びます。
口内炎の原因は、局所的なもの、全身的なもの、原因不明なものなど様々です。口内炎が出来やすい場合とは、その多くが全身的な抵抗力の低下あるいは免疫反応が関係しておこるもので、再発性アフタは代表的なものと言えます。
その他、原因の比較的明らかなものにはウイルス性口内炎、薬物アレルギーによる多形滲出性紅斑、自己免疫疾患による天疱瘡や類天疱瘡、紡錘菌やスピロヘータの感染による壊死性潰瘍性口内炎や壊疽性口内炎、急性偽膜性カンジダ症などがあり、原因不明なものには扁平苔癬があります。局所的には虫歯や不良義歯、金属アレルギーが症状を悪くする場合があります。
今回はここまでとさせていただきます。次回は「高齢期に起こりやすい歯と口の病気5」を書かせて頂きます。