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高齢期に現れやすい歯と口の病気3 ─高齢者の歯と口の中の状態 9

著者:デンタルオフィス湊

おはようございます。連日、体温を越えるような厳しい暑さが続いていますね。
今回は熱田のコラムを書かせて頂きます。

「高齢期に現れやすい歯と口の病気3」

1、あご(顎)・顔面

(1)顔面がひきつる

顔面皮膚の引きつりは、顔面神経または三叉神経の痙攣で起こります。いずれも顔面筋の異常緊張などが原因で、中年以降の高齢期によく見られます。顔面神経の痙攣には「顔面チック」と呼ばれている独特な症状があります。左右どちらかの顔面の表情筋の一部、特に眼瞼部(まぶた)によく見られ、瞬間的な痙攣が繰り返し起こります。疲労などの精神的なストレスや血管障害性などが原因と考えられています。

多くの場合は自然に治癒します。三叉神経の痙攣には繰り返し起こる間代性痙攣と、しばらく続く硬直性痙攣があります。

間代性痙攣では咀嚼筋が痙攣し、下顎が異常に動き、噛みしめや歯軋りが起こります。これも疲労などの精神的ストレスや寒冷刺激が原因と考えられています。

硬直性痙攣では咬筋や側頭筋などが収縮したままになります。引きつったまま口が開かなくなります。これはてんかん発作、ヒステリー、破傷風などで起こる全身的痙攣の部分症状の事が多いようです。

治療は原疾患の治療と精神安定剤の投薬などの対症療法です。

(2)顔面がゆるみ、口が動かない

脳出血や脳梗塞による片麻痺の部分症状として、麻痺側の表情筋が弛緩したり動かなくなります。又寝たきり老人に多く見られるように、長期間顔面の筋肉を使用しないと筋肉が緩み、口が十分動かなくなります。

歯が無いまま義歯も使用せず、食事は流動食に近いものばかり取りますと、咀嚼機能が低下し、顔面の皮膚には緊張がなくなり口の動きが鈍くなります。当然のことながら口を十分に動かさないため、発音も不明瞭になります。

この状態を放置すればするほど回復は困難です。この状態で義歯を入れても口の周囲の筋肉と皮膚の緊張を保てないため、安定して使用することが出来ません。

治療法は口の内外を刺激し、咀嚼や会話を積極的に行わせることです。毎日3回は歯ブラシを使う事で、口腔のケアだけでなく口の運動機能回復も図れます。電動歯ブラシでの機械的刺激や、開閉口を繰り返し行い、口唇、頬部など口腔周囲の運動(お口の体操)を続けることです。

(3)あご(顎)が開かない

顎間節も四肢の関節と同様に、日常の運動量が低下すると次第に動きが悪くなります。食事と会話が顎運動の基本です。

経管栄養や中心静脈栄養(IVH)、胃瘻などで口からの摂食が無い状態が長く続いたり、意識の低下が長期になると会話も少なくなり、額運動は低下します。高齢者で義歯使用者の中には食品を小さくしてから口に入れ、大きく口を開けず、あご(顎)を小さく動かして噛む人がいます。そうすれば何とか噛むことができても、決して正しい顎の動きは出来ません。

自分の歯で噛むことが最もよい事なので、むし歯(齲蝕)や歯周病及び口腔粘膜を悪くしないように気を付けながら生活して下さい。日頃から顎(顎)を十分に動かしていないと、あごが開きにくくなってきます。義歯の方も口唇や頬部を緊張させたり、弛緩させながら義歯を安定させ、食品を咀嚼したり明瞭な会話を続けると、あごは動くようになります。

2、歯の無い所があるので不便

歯が無くなり日常の食事や会話が不便になった場合は、早めに歯科医院で治療をする事をお勧めします。

歯を人工的に補うには3つくらいの方法があります。第一の方法は、無くなった歯の両隣の歯を加工して人工的な歯を固定する方法です。固定してしまうので、自分の歯と同じような感覚で食事や会話が可能です。この補綴物をブリッジと言います。この方法は両隣の自分の歯が健康でなければできない事や、1~2本と少数の歯が無くなった場合に限られます。

二つ目の方法は、取り外しのできる義歯(入れ歯)です。自分の歯が少なくなっても可能です。ただ金属のバネなどがあり、固定式に比べて異物感は強く、見た目も目立つのが欠点です。

第三の方法は、歯が無くなった場所の骨に「インプラント」という人口の歯根を植え込む方法です。噛み合わせの条件や骨の条件などでこの方法が使えない場合もあります。

とにかくいろいろな方法がありますので不便のまま我慢しないで歯科医院で自分の希望を説明し、よく相談してください。
よくある質問で

Q:歯が無い所があっても不便はないのですが、このままでは問題があるのでしょうか?
というものがありますが、その答えとして

A: 歯が無くなっても数本であれば、日常の食事で不便にならないという人も珍しくありません。しかし、幾つかの理由で、不便でなくても、人工的に歯を補っておくべきです。歯が無い状態を放置すると、その両隣の歯が傾き、噛み合わせの歯を失った相手の歯も延びて、全体のバランスが崩れてきます。歯のある方の側だけで長い間食事をしていると、左右の筋肉も不調和になり、顎の骨の変形や、顎の関節の負担も片寄る
という報告があります。

不便はなくても、全体の調和のとれた機能を維持するするために、歯の無いところは早めに治療しておくべきでしょう。

ご自分の食事で、噛めているかどうかは主観的にはおおよそ分かっていると思いますが、歯が悪くなると無意識に噛めそうな物にしか箸を付けないという傾向があります。
そうした場合には、自分では噛めていると思っていても、バランスの良い栄養を摂る為の食事がきちんとできているかは疑問になります。やはりチェックをする必要があります。

歯が少し悪くなってご自分で心配な人は、家族の中で自分の噛めるものが偏っていないかをチェックしてもらって下さい。

歯科では「山本式高度表」というチェック表が有名です。これは義歯を入れる前と後で「噛める物」の比較をするのに有効です。試してみて下さい。

3、歯槽骨の役割と変化

歯が失われた場所の傷が治った後は、少し盛り上がった土手状になっています。それを歯科では「歯槽提」とか「顎提」と呼んでいます。この土手の形や固さが、その上に乗る義歯の安定や義歯の噛み具合に影響してきます。高く、幅のある立派な歯槽提の場合は、義歯が良く吸い付き、噛んだ時にも安定し、よく噛める義歯ができます。しかし人によっては土手が無く、平らな歯槽提になってしまう場合もあります。そのような歯槽提では安定した義歯を作るのが困難になります。

歯槽提の「高い・低い」は一つは歯が無くなってからの時間に関係します。歯が無くなると徐々に歯槽提の内部にある歯を支えていた骨が自然とやせてくるからです。義歯を入れず適度な力が加わらないと、骨のやせ方が速くなると言われています。(廃用性委縮)逆に義歯を入れても、合っていない義歯で、部分的に強すぎる力が加わると骨の痩せ方が速くなります。食いしばりの強い人も骨の痩せ方が速くなります。

歯が抜ける前にその歯が重度の歯周病(歯周疾患)に罹っていた場合、歯の周囲の骨は歯周病のために吸収し、歯が無くなった時、貧弱な歯槽提しか残らないという結果になります。

歯を不用意に抜歯するのは避けたいものですが、保存できる可能性の無くなった歯は、抜歯する事により健全な歯槽提を確保するという選択も必要になります。歯周病で無い歯は歯の根だけでも残っていると、歯槽提の高さや幅が痩せずに済みますから、可能性のある歯は極力残す努力が必要です。

4、口や歯がいつもモグモグ動いてる

(1)オーラル・ジィスキネジア(OD)

「キネジア」は運動という意味で、「ジィス」は不・非・無といった不調を表します。「ジィスキネジア」は筋肉の動きが異常になる病気です。特に舌・唇・顎などの口腔領域に現れる不随運動を「オーラル(口の)・ジィスキネジア」と呼んでいます。口や歯がいつもモグモグ動いている症状なので、外から見てもすぐ異常に気が付きます。

本来ならば自分の意志(随意)でのみ動かすことができる身体の部分に現れる症状なので、運動を制御している脳に関係した疾患だと考えられています。また症状の発現の大部分は、薬剤投与が大きな因子になっている事が分かっています。そう多くはありませんが、特定の基礎疾患や薬物服用の既往のない老人性のオーラル・ジィスキネジアが見られ、「老人性OD」と呼ばれています。60歳以上の高齢者の4~7%に現れ、女性に多く、加齢とともに頻度は増加します。

ジィスキネジア

抗精神病薬やL-ドーパというパーキンソン病のための薬を長期間服用する事で、ジィスキネジアが発症する場合が多いようです。薬を減らせばジィスキネジアは納まってきますが、パーキンソン病の症状が現れてくるためジィスキネジアのコントロールはなかなか難しいと言われています。

まず主治医に相談してください。

手の震えが激しく、歩行も一段と困難なっている場合は、それを改善する薬物療法や外科療法があります。口の付近だけに現れる場合は、歯科的な問題を抱えてる場合も多いので、歯科医師に口腔内の状態をチェックしてもらって下さい。
歯科治療も困難を伴う事が多いのですが、不調な義歯を治したことでモグモグ運動がかなり改善され、それに伴って手足の震えも軽減したという報告もあります。咀嚼や発音を改善する事は、本人がいつも抱えている精神的な劣等感からも解放されるという効果もあるようです。

以上で、顎・顔面に起こりやすい病気は終了させて頂きます。次回は「高齢期に起こりやすい歯と口の病気4、舌・その他」を書かせて頂きます。