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高齢期になって現れやすい歯と口の病気1 ─高齢者の歯と口の中の状態7

著者:デンタルオフィス湊

おはようございます。いよいよ関東も梅雨に入りました。街中でも鮮やかな紫陽花の花が咲いていますね。
今回は熱田のコラムを載せて頂きます。
「高齢期になって現れやすい歯と口の病気1」

1、歯と歯肉(歯ぐき)

(1)高齢期のカリエス「根面齲蝕」

① 根面齲蝕の特徴
歯周疾患のある高齢者の方の歯肉は下がる傾向にあります。若い頃には見えなかった歯根(歯の根の部分)が見えるようになります。歯冠部(歯ぐきから出ている白い部分)はエナメル質で覆われており、歯根部では薄いセメント質が象牙質を覆っています。エナメル質と異なり、セメント質や象牙質はむし歯(齲蝕)になり易い特徴があります。
根面齲蝕とは、露出した歯根が齲蝕になった状態を言います。根面齲蝕は男性では30歳代から、女性では40歳代から増加し、歯がある高齢者の2割に根面齲蝕が認められるという報告があります。歯肉が下がった歯に対する調査では、上顎(上あご)では前歯、下顎(下あご)では臼歯に根面齲蝕が出来やすいという報告があります。
根面齲蝕には、齲蝕が進行していく進行性齲蝕(活動性齲蝕)と、進行が停止している停止性齲蝕(非進行性齲蝕)があります。進行性齲蝕は黄色あるいは明るい褐色で、歯垢に覆われ歯質が軟らかくなっています。停止性齲蝕は黒褐色などで表面は滑らかで歯質は硬い状態です。
② 根面齲蝕のリスクファクター(根面齲蝕になり易くする要素)
根面齲蝕のリスクファクターには、歯肉の退縮(歯根面の露出)、歯周疾患(歯周病)、口腔乾燥(唾液分泌量の減少)、口腔清掃状態、砂糖の摂取などが上げられています。
歯肉が下がること(歯肉退縮)により歯根が露出しますが、歯肉退縮が起こる最大の要因は歯周疾患です。歯周疾患が重度であるほど治療後の歯根露出が多くなります。そして歯根が露出すると、根面齲蝕になる易くなります。
高齢者では加齢や常用薬の副作用により唾液分泌量が減小する傾向があります。唾液が減少すると齲蝕のリスクが高くなります。高齢者では義歯を装着している人が多くなります。義歯装着により口腔内が汚れやすくなり、齲蝕のリスクが高くなります。」
③ 根面齲蝕の予防
齲蝕予防の基本は、歯磨きによる歯垢除去、フッ化物の応用、甘い菓子や飲料の摂取回数の減少、栄養バランスのとれた規則正しい食生活、定期的な歯科検診です。定期的に歯科を受診する事が、口腔の健康維持に欠かせません。歯科医師、歯科衛生士により口腔内の状況や生活習慣などの評価を受け、適切な予防方法を選択する事が大切です。基本的には根面の露出を起こす歯肉退縮を予防する事と、露出した根面に齲蝕を作らない様に予防する事が大切です。歯肉退縮の原因は、加齢によるものと、歯周疾患、不適切なブラッシング、小帯の付着位置、咬合異常(噛み合わせの異常)、などです。歯肉退縮を起こす最大の要因である歯周疾患の予防が、最も重要です。歯肉退縮や歯周病の予防のためにも、適切なブラッシング方法を身につける必要があります。
露出した歯根の齲蝕予防には、歯根面の強化、口腔清掃(歯垢除去)、唾液分泌の改善、正しい食生活、定期的な歯科受診などが大切です。フッ化物には歯面強化、再石灰化促進、歯の酸産生抑制という働きがあり、歯と齲蝕原因菌の両方に働きかけ齲蝕を予防してくれます。フッ化物配合歯磨剤の使用とフッ化物による洗口が自宅で行えます。フッ化物配合歯磨剤の使用は多くの人に受け入れられやすい方法ですが、フッ化物の効果的な使用方法について歯科医師、歯科衛生士から指導を受ける事が必要です。齲蝕のリスクが高い人には、歯科医師・歯科衛生士によるフッ化物の歯面塗布が推奨されています。
頻繁に甘味食品を口にしている人や口腔乾燥を気にして飴を舐めている人に、根面齲蝕が多発する事があります。砂糖を含む食品を頻繁に摂取すると、又、口の中に長時間含むと齲蝕になり易くなります。菓子などの間食回数が多い人に齲蝕が多いと報告されています。その為、砂糖ではなく、齲蝕の原因にならないキシリトールなどの甘味料を使用した食品が推奨されています。
④ 根面齲蝕の治療
齲蝕で失った歯質が浅い場合(0、5mm未満)には、フッ化物を用いて再石灰化を試みる事が推奨されています。歯質の失われた部分が大きい場合には、齲蝕を除去してコンポジットレジンやグラスアイオノマーセメントを用いて修復処置が行われています。根面は酸に対する抵抗性が低く、部分的に修復処置が容易でない事が多いので、治療後にも定期的な受診や適切なブラッシングが大切です。

(2)歯肉が腫れた

高齢期になってくると、成人期から始まった歯周病(歯肉の病気)がますます顕在化してきます。徹夜や働き過ぎで体が疲れたり、風邪をひいたりして体力が落ちた時、時々歯肉が腫れたりしませんか?それも同じ所が決まって腫れたりします。腫れ始める時は、痛みも伴ったりする事もあります。
一般的には、腫れ始めて3日位で、以後、腫れはだんだん収まってきますが、ほおっておくと腫れを何度も繰り返し、歯周病(歯周疾患)は徐々に進行して重症になっていきます。腫れ始めたら早めに歯科で審査してもらった方が良いでしょう。

(3)歯が時々浮いた感じがする、噛むと強く当たる

歯周病で歯肉が腫れる前兆に、よく歯が浮いたり、噛むとある歯が1本だけ強く当たったりすることがあります。これも、歯周病の症状の一つです。
このような症状が出た時、休養をとり、ていねいに歯磨きをしていれば、ほとんどの場合、症状は消退してしまいます。
この症状は歯周病以外でも硬い物を食べたり、間違って小石などを噛んでしまった後にも現れます。この場合は一時的なもので、ほおっておけばだんだん治まります。
また他に、歯の根の先に病気があるなど、骨や歯肉の中で何らかの異常がある時にも現れる症状です。
何度もこのような症状を自覚するようでしたら、治まったからといって安心せず、歯科を受診してください。

(4)歯がぐらつく

歯を強く打ったりして、歯が抜けかけたり、折れたりしてぐらつく場合もありますが、高齢者では、やはり歯周病で歯を支えている骨や歯肉が悪くなってグラグラしてくる場合が多いようです。
歯肉の外見はあまり変わっていなくても、中の歯を支えている骨が悪くなっている場合もあります。
歯肉が腫れている時などは、余計にぐらつきます。噛んで痛いときもあります。腫れが治まると、ぐらつきも軽減します。放っておかず、歯科で診てもらって下さい。

(5)歯と歯の間がすいてきた、歯が伸びてきて歯の根が出てきた、歯肉が下がった

歯肉はだんだん下がり、歯と歯の間もすいてくると言われていますが、健康な状態で、歯も全部揃っている人では、80歳になっても、これらの症状は見られません。
「近頃、歯と歯の間に物が詰まり易くなった。」とか、「歯がすいて、息が漏れる。しゃべりにくい。」とか「歯と歯の間から、唾が飛んで仕方がない。」などと感じられる方は、ご自分の歯肉を鏡でよく見て下さい。歯の根が大分出て来ていませんか?歯と歯の間にあった歯肉がなくなり、すき間が開いて来ていませんか?
少々のものでしたら、歯磨きの仕方で治せる場合もかなりあります。一度、歯科医院で歯磨きの仕方も含めて診てもらって下さい。勿論、この症状の場合、歯周病が疑われます。

(6)歯並びがデコボコしてきた、出っ歯になってきた

歯は日々少しずつ動いています。年齢と共に隣との歯の間がすり減って、奥歯の方から前の方にだんだん傾いてきます。歯肉が健康で、歯並びもきれいに整っている場合は、歯がすり減る量だけの動きですので、大した量ではありませんが、歯を支えて入り歯肉が歯周病などに罹ってくると、それ以上に歯は動きます。歯肉の腫れなどによっても影響を受け、前の方に傾くだけでなく、とんでもない方向に傾いて動いてしまいます。
又、歯並びが悪い場合も、その悪い歯が余計目立った動きなどをしてしまいます。お年寄りのイメージとして歯が前に出た感じの方が多いのは、歯周病で歯が動いてしまっている場合が多いようです。
対応として、どうしようもない場合もありますが、歯周病を治したうえ、矯正などでより良い経過をを保つこともあります。是非歯科で相談してみて下さい。
今回はここまでとさせて頂きます。次回は「高齢期になって現れやすい歯と口の病気2」を書かせて頂きます。