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乳児期の口の管理1 ─妊娠期と乳幼児の歯と口腔内の特徴 21

著者:デンタルオフィス湊

おはようございます。
冬から春への交代が激しいせめぎ合いの様に、寒暖の動きが激しく行われたと思ったら、桜が満開となりました。昨日の日曜日は天気も良く、近所の公園ではお弁当を持った、お花見の人々で溢れていました。春になりましたね。
今回は院長先生のコラムです。
第21回目です。今回は「乳児期の口の管理1」についてお話させて頂きます。(babyhood early infancy)

乳児期とは

乳児期は、一般には1歳未満の時期を言います。(乳児期はearly childhood 1~6歳)
今回は「乳歯が生えるまで」、「乳前歯の生えるまで」そして「乳臼歯の生え始め」に分けて、食べる事(摂食)と口腔内の清掃を中心に、気を付けるべき点について説明したいと思います。
出生から約1年半頃までの乳児の全身的な発育には、目覚ましいものがあります。その中に食べる事や話す事等、口を使ってなされる機能も含まれます。これらの基礎は、この時期に形成されます。

1、乳歯が生えるまで(生後約6カ月頃まで)

この時期は、まだ歯が生えてませんから、無歯期と言います。歯がありませんから、栄養は哺乳が主体となります。哺乳は出生時に、すでに身につけている反射によって行われます。乳児の口の形は、上下の顎の位置関係や、口蓋(上あごの歯列の内側の部分)に凹みがある等、乳首から母乳、或いは哺乳瓶からミルクを吸うのに適した形をしています。又歯が無い為に、舌が自由に動かせます。つまり乳首をとらえ易い構造になっています。又、歯が無い為に母乳やミルクが歯に付着して、口の中に長く滞ることもありません。母乳やミルクが口の中に長く滞まると細菌のエサになり、口の中が汚れてしまいます。しかし、時々舌に苔が付く事があります。舌が白っぽくなりますが、これは乳児期に起こる一過性のものですから、無理に取り除かなくても問題ありません。これとは別に熱が出た後やお腹を壊した後に、褐色の厚い苔が、舌に付くことがあります。この様な時は、ガーゼ等で軽く清拭してあげて下さい。

乳児は運動や自身の感覚を通して、人や物とかかわっています。そういうかかわり合いの中で発達していきます。多くの感覚の中で口への刺激に対する反応は最も早く発達します。約胎生8週頃から見られるという報告もあります。赤ちゃんは生まれた直後から、乳首の感覚を受け入れて、おっぱいを吸うという反射行動が起こります。次に自分の手や指、衣類やタオルを口に運んで、舐めたり、しゃぶったりして遊ぶようになります。赤ちゃんの口の周りは、とても過敏に反応します。その為、自分の手や指を舐めたり、しゃぶったりして過敏さを減少させていきます。過敏さを減少させながら、おっぱいを吸う反射もなくしていきます。過敏さを減少させたり、反射を無くしていく事は、離乳への準備や歯ブラシの導入を受け入れ易くする意味でも重要な事の1つです。生後5か月位になったら、時々赤ちゃんの口の中を、ブラッシングする様に触ってあげて下さい。指先は乳首に似た形をしていますから、他から加えられる刺激の中では、最も受け入れ易い刺激と考えられます。この時期は、そろそろ歯が生えて来る頃ですから、指先に膨らみを感じたら、やがて歯の萌出が期待できます。赤ちゃんが、口の中を指で触れられる事に慣れれば、歯磨きの第1段階、つまりガーゼ磨きがスムーズにできる様になると思います。ここで子供さんの虫歯対策として重要な事をお話しします。それは子供さんが3歳になるまでは、他の人が食べた物や食器を、絶対に赤ちゃんの口の中に入れない事です。お母さんやお父さん達のが噛んで赤ちゃんに与えると、ムシ歯菌が感染してしまいます。箸やスプーン、歯ブラシ等を赤ちゃんの口の中に入れてもいけません。現在、3歳までは、口腔フローラが完成していないと考えられています。ですから、ほんの少し、ムシ歯菌(S.ミュータンス)が赤ちゃんの口の中に入っても、口の中の菌がムシ歯を撃退できず、ムシ歯が出来てしまいます。十分気を付けてください。

2、乳前歯の生え始め(生後約7カ月から1歳頃まで)

乳歯は、平均的に生後6~8カ月頃に生えてきます。下顎の前歯から生えて来るのが一般的です。この時期は唾液が多くなります。しかし唾液を上手く飲み込めない為、口から外に漏れてしまいます。離乳も始まり、食欲も旺盛になってきます。歯が萌出して、口の中も変化してきます。又、何でも口に持って行って確かめようとします。これらの刺激が唾液の分泌を促進します。下顎に生えた前歯の汚れは、この唾液によって洗い流れますから、ムシ歯になりにくくなります。ですから、まだ歯ブラシでゴシゴシ磨かずに、湯冷ましを飲ませたり、ガーゼで優しく拭き取って、ブラッシングの第1段階を習得してください。ムシ歯にならない様にと焦ってブラッシングをすると、ブラッシングされる赤ちゃんのトレーニングが出来ていない為、歯肉や小帯を傷つけてしまいます。痛い思いをすると、赤ちゃんがブラッシングを嫌がるようになってしまいます。先ずは、お母さんの指で、歯肉を触ってあげて下さい。赤ちゃんが触られる事に慣れて来たら、次にガーゼで、そっと拭いてあげて下さい。そして、指にガーゼを巻いて、ブラッシングと同じような動きをして、赤ちゃんが受け入れてくれるように頑張って下さい。

生後半年を過ぎますと、御両親や兄姉の真似をするようになって来ます。家族皆でブラッシングしている所を見せて、赤ちゃんが真似をするように誘って見たり、歯ブラシを持たせて、少しずつ慣れさせる事も大事です。上の前歯は、下の前歯と違い、唾液だけでは汚れが落ちません。今まで、湯冷ましや」ガーゼだけでしたが、そろそろ1日1回程度で構いませんので、赤ちゃん用の歯ブラシや指サック(歯ブラシに似せたゴム製の指サック。商品名はラブです。)を使ってクリーニングをして下さい。上の前歯にある歯肉は、とても敏感な組織ですから、とのかく優しくソフトに磨いてあげて下さい。大人の人のブラッシングでも、約100g程度の強さ(歯ブラシの歯に対する圧力)ですから、歯ブラシを押しつけない様に気を付けて下さい。力の加減が分からない時は、市販の染め出し液や錠剤を使って、汚れを落としてみて下さい。歯磨き習慣を身に付けさせる事が、とても大事ですが、強引に時間や回数決めない方が、赤ちゃんに受け入れてもらえます。例えば、寝る前にブラッシングをすると機嫌が悪くなる様でしたら、夕食後の機嫌いい頃を見計らって、手速く磨くようにして下さい。とのかく、嫌がらない工夫が大事です。そして、口の中が綺麗になった時の爽快感を覚えてもらう事が重要です。そうすると、将来「歯を磨きなさい」と、怒鳴らなくても、本人が、口の中が汚れてると気持ちが悪いので、自分から磨く様になります。
歯磨きの他に、歯や口の健康を守る為には、食習慣も重要なファクターの1つです。離乳が始まって間もない頃は、離乳食だけでは十分な栄養が与えられません。その為、母乳やミルクで補わなければなりません。しかし、夜間の授乳やおっぱいをあげながら寝かしつける習慣は、そろそろ止めなければなりません。
夜間の授乳や授乳しながら寝かしつけると、母乳やミルクが歯と唇の間や、歯と舌の間に1晩中、残ってしまいます。これが毎晩繰り返されると、母乳やミルクがムシ歯菌の餌となり、ムシ歯菌が爆発的に増えます。そして、ムシ歯菌が酸を出し、徐々に歯の表面が脱灰(溶ける事)されてムシ歯になって行きます。
又、この時期に、食生活の基本的なリズムを形成する事が大事です。その為には、昼夜の生活リズムを安定させなければなりません。生活リズムを安定させる為に、御家族の生活リズムを見直す必要があるかも知れません。
今回はここまでにさせていただきます。次回は「乳児期の口の管理・2」です。