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口唇裂と口蓋裂 ─妊娠期の歯と口腔内の特徴 19

著者:デンタルオフィス湊

おはようございます。
今回は院長先生のコラムです。

「口唇裂と口蓋裂」について

第19回目です。今回は「口唇裂と口蓋裂」についてお話しします。

【1】どんな病気か?

(1)口唇裂:裂は一般に上唇の右や左側、或いは両側に表れます。この裂が上口唇に出来た状態で生まれてくる病気です。口唇は胎生4~7週に、そして口蓋は胎生7~12週に形成されます。
(2)口蓋裂:これは口腔と鼻腔を隔てている口蓋に裂を生じて生まれてくる病気です。

【2】口唇裂や口蓋裂が生じるメカニズム

母親の胎内に宿った赤ちゃんの顔面は、最初から出来上がってる訳ではありません。顔面突起と言われる部分が組み合って、徐々にくっついて行って出来上がります。口の中も同じです。左右の突起が、成長と共にくっつく事によって完成します。これらは妊娠初期、つまり妊娠3~4カ月頃に行われます。この間に何らかの異常が起ると、本来組み合うはずの突起が、途中でくっつかなくなって仕舞います。このくっつかない部分を裂と言います。この裂が口唇に起きると口唇裂(胎生4~7週に形成されます。)又口蓋に起きると口蓋裂(胎生7~12週に形成されます。)と言います。

【3】分類と人種的な割合

口唇裂も口蓋裂も、いろいろなタイプに分類されます。
医学的には裂のできる場範囲によって、いくつかに分類されています。
口唇裂であれば主に部位による分類と範囲による分類があります。部位別としては上口
唇の右か左か、或いは両方にあるかにより分類されています。
次に範囲による分類について説明します。裂が赤唇部分だけのものは、第一度です。裂が瀬赤唇を越えて白唇に及ぶものは第2度です。鼻の方まで広がっている場合は第3度です。 第1度と第2度を不完全唇裂と言い、第3度を完全唇裂と呼んでいます。人種的割合は、白人が700~800人に1人、黒人は1,500~2,000人に1人、黄色人である日本人は400~500人に1人です。日本人は、白人や黒人に比べて、発生頻度がかなり高いです。

【4】原因

発生原因は、まだわかっていません。現在の所遺伝的因子と環境的因子の2つが考えられています。遺伝的因子は現在まだ予防する方法がありません。環境因子としては、両親の年齢、母体の病気や栄養状態、X線、薬、アルコールやタバコ等の嗜好品等が上げられます。この2つの要因が相互に作用し合って裂を作ってしまうのではないかと考えられています。遺伝的な要因はコントロールできませんが、環境的要因は変えられる部分がありますから、赤ちゃんの為に出来るだけ努力をして欲しいと思います。この病気は審美的な問題だけでなく、栄養の摂取、呼吸、発音等、人が生活していく上で、とても重要な機能にも悪影響を与えます。ですから生まれた直後から医療面でのサポートを必要とします。
又、この病気のある赤ちゃんは、他の部分にも問題がある場合があります。例えば、心臓の異常、耳や手足の形態異常が言われています。この病気の赤ちゃんには細部にわたる全身的な検査が必要となります。

【5】治療

この病気の治療は手術以外ありません。かなり以前は口腔外科、整形外科、耳鼻科で行われていました。現在は口腔外科と形成外科が専門的に手術をしています。口唇裂と口蓋裂の手術を別々に説明したいと思います。因みに、裂は上唇に多く、下唇は極めて稀です。
口唇裂の手術
生後約3~5ヶ月で体重が5~6㎏になったら手術をします。裂がもし左右にあっても、どちらか1つを手術します。この傷が治った頃、生後6~7カ月頃にもう片方の手術をします。何故この時期に手術をするかというと、審美的に機能的に本来の形や働きが回復し易いからです。そこで赤ちゃんの全身的な状態が安定し、手術に耐えられる時期として、手術を行う部分の口唇がある程度発達し、手術がしやすくなるので、この時期に手術が行われます。最近では、この手術をするまでの期間に、マウスピースのような物を装着して、哺乳をし易くしたり、離れている歯肉を出来るだけ寄せて、手術をし易くする方法が考えられています。
もし赤ちゃんに心疾患等の合併症があれば、その疾患を考慮して、口唇裂の手術を延期する事があります。
手術は一般的に1週間~10日位の入院が必要です。手術は全身麻酔によって、赤ちゃんが眠っている間に行います。又、手術の方法は、裂のタイプや範囲、或いは病院によって少し違いがあります。いずれにしても、裂部を単に縫い合わせるのではありません。口唇や鼻の形、手術後の発育、それぞれの機能が十分に得られる様に、徹底的に、緻密な、治療計画が立てられます。
口唇裂が1つだけの場合、この初回の手術だけで、殆どは、終わります。しかし手術後の成長に合わせて、傷跡や唇の形、鼻の形を修正する事もあります。
口蓋裂の手術
手術の目的は、食物を良く摂取できる様にする事と、普通に話せる様にする事の2つです。食物を良く摂取出来る様にするには、口蓋の形態や機能を回復させなければなりません。又、2つ目の発音に関しては、鼻咽頭閉鎖機能を改善させなければなりませんこの機能は「言葉をスムーズに話せる」様になるために、とても大切な機能です。

【6】治療時期

この手術は1回法にしろ、2回法にしろ現在1歳2カ月~1歳半に行われるのが一般的です。どちらの手術方法にも、一長一短があります。手術を2回に分けて行う時は、1回目は1歳代に行い2回目は5,6歳の時に行います。1回目は喉の近くにある軟口蓋(骨の裏打ちの無い部分)だけを閉鎖します。2回目は、歯に囲まれてる部分、いわゆる硬口蓋(骨の裏打ちのある部分)を閉鎖します。言葉の面では、出来るだけ早く手術した方がいいのですが、困ったことに顎の発達や歯並び面では、ある程度遅く手術した方が、望ましい結果が得られやすいのです。この為、手術の時期については、現在も検討されています。この病気があれば、出生直後から手術直前まで吸飲力や顎の成長を助ける目的で、「ホッツ床」と呼ばれる口蓋床を装着することになります。そして1回目の手術の後、2次的に鼻口腔瘻閉鎖手術、咽頭弁移植手術、ル・フォー型上顎骨骨切り術、(手術的顎矯正治療)、歯を並べる為の歯槽骨への骨移植術等の手術の他に、スピーチエイドの装着、義歯やブリッジの装着等、歯科的治療も必要になります。
今回はここまでとさせていただきます。次回は「口唇裂と口蓋裂」の続きです。