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健康な母胎の維持 ─妊娠期の歯と口腔内の特徴 9

著者:デンタルオフィス湊

おはようございます。
小中学校で歯科検診が行われたと思います。
クリニックにも、歯科検診の結果用紙を持って、治療や詳しい検診を受けに小さな患者さんが来られます。
緊張した面持ちで待合室で順番待ちされています。治療が終わった時の嬉しそうな顔が、とても晴れやかです。
虫歯になる前に、定期的に検診に来て頂き、歯の状態を知って頂き、歯ブラシの仕方を習って虫歯にならない様に過ごして頂きたいと思っています。
今日は、院長先生のコラムです。

第9回目です。
今回は「健康な母胎の維持」についてお話しします。

精神的安定

第1に妊婦さんの精神的安定を維持しなければなりません。
妊婦さんは親になれる喜びや達成感を感じる反面、親になる事の不安やマタニティー・ブルーと言われる軽いうつ状態におそわれる事もあります。
健康な母胎を維持するために、生活習慣や食習慣と共に、精神面でのサポートも、極めて重要なことです。
妊婦さんと夫の御両親、御家族の応援が大事です。特に夫の協力やサポートは、不可欠です。

栄養のバランス

第2に、栄養のバランスが重要です。
日頃は値段や便利さ、好きな食品、慣れた食品等、習慣的に選んでしまうと思います。妊娠を機に、食習慣を見直してみてほしいです。
バランスのとれた食事のために、下記の7項目をチェックしてください。
①毎日きちんと3食を食べているか。
② 1日30種類以上の食品を食べているか。
③30回以上噛んでいるか。
④甘さや塩分の使用を控えて、薄味にしているか。
⑤極端なダイエットや過食をしていないか。
⑥インスタント食品や、加工食品、ファストフード、外食が多くないか。
⑦ジュースやスポーツ飲料取りすぎていないか。

妊娠前と妊娠中の栄養の所要量と栄養素の種類に関しては、最新の栄養所要量の改訂版をチェックしてみてください。
きちんと摂取するのは大変ですから上記の7項目を守るように努力して下さい。(正確に)
妊娠中は、タンパク質やカルシウム、鉄分、ビタミン類の必要量は増えますが、食品群全体の量は多くなることがありません。
母体の健康維持と赤ちゃんの発育のためには、食事の量よりも質ののバランスが必要になります。
骨や歯の成分であるカルシウムは、妊娠前の1.5倍必要です。また、カルシウムを体内に取り込むには、ビタミンD3が妊娠前の4倍必要です。インスタント食品にはカルシウムを阻害するリンが多く含まれているそうです。ビタミンD3が不足したり、リンが増えると、、せっかくカルシウムをとっても吸収されにくくなります。
また農薬や添加物の少ない食品を選んで下さい。
そして食べる前に野菜や果物をよく洗って、農薬を落としてください。添加物は加熱すると減少するそうです。

妊娠中の体の異常が赤ちゃんに与える影響

次に妊娠中の体の異常が赤ちゃんに与える影響を疾患ごとに大雑把にお話しします。
①まず「つわり」です。
「つわり」は、妊娠5、6週頃から始まり、8割位の妊婦さんは、12週〜16週ごろまで続くそうです。ピークは7〜9週頃と言われています。症状は、食欲不振、悪心、嘔吐等の消化器系が主です。
この時期は、栄養分が優先的に赤ちゃんに行くので、食事を1日3回、無理矢理取る必要はありません。また、栄養素に神経質にならず、「つわり」が軽くなった時に、食べたい物を食べて下さい。飲み物も飲みたいもので構いません。特に嫌いでなければ、カフェインの入っていない麦茶をお勧めしたいと思います。

②次に妊娠悪阻です。
生理的な範囲を超えた病的な「つわり」を「妊娠悪阻」と言います。
症状は、脱水症状や電解質異常、ケトン尿症、体重減少等です。
悪化すると、母体の危険や流産が心配されます。
産婦人科に適切な指導を受ける事をお勧めします。

③貧血
貧血とは生体の循環血液単位量当りの赤血球数、又は、ヘモグロビン量が、基準範囲を超えて減少した状態をいいます。
溶血性貧血や鉄欠乏性貧血、再生不良性貧血等があります。
ここでは妊婦さんに関する鉄欠乏症貧血に対してお話します。
鉄欠乏貧血は、およそ20〜30%の妊婦さんに見られるそうです。
もともと女性は、血色素(ヘモグロビン)が、男性より不足している人が多く、妊娠前から貧血気味の人がいるそうです。妊娠したため、隠れ貧血が顕在化したものと言われます。
鉄分も、赤ちゃんに優先的に行くので、重症でない限り心配はいりません。
鉄分の多い食品として、レバー、貝類、ひじき、ほうれん草が挙げられます。又、鉄製のフライパンで調理すると摂取できるそうです。
しかし、鉄分は体に吸収されにくい栄養素ですから、病院で鉄剤を処方してもらう事も視野に入れて置いて下さい。

④妊娠中毒症についてお話しします。
原因は不明です。臨床的には高血圧を主体とし、蛋白尿や全身の浮腫(むくみ)をきたす適応不全症候群と考えられています。
主に、妊娠後期に発症します。
血管が収縮して、血液の循環が悪くなります。重症になると、胎盤機能が悪くなり、早産や未熟児出産の原因になります。
減塩、高蛋白、低カロリーが原則です。

⑤妊娠性歯肉炎とエプーリス
以前は「妊娠性歯肉炎」と言う病名がありましたが、現在使われていません。
つまり、妊娠が直接の原因で歯肉炎を起こすことがないそうです。口腔内を清潔に保っていると大丈夫です。
自分では歯肉炎を治せない時は歯科医院で、PMCTやPTC(歯科医師や衛生士が歯ブラシ等使って歯を磨いたり、機械を使用して歯をきれいにする事)等の専門的な処置をお勧めします。
歯肉炎は、早産や相未熟児出産の誘引になります。
エプーリスとは、病名では無く、歯肉や歯根膜、歯槽骨膜等から発生する腫瘤の事です。腫瘍ではありません。
エプーリスは、妊娠初期から中期に(妊娠3ヶ月頃)みられ、比較的急速に大きくなります。
原因は口腔内の不衛生、ホルモンの変調、局所刺激が考えられています。
発音や咀嚼に問題なければ、出産まで様子を見ます。出産後に自然治癒する事があります。歯槽骨膜や、歯根膜から出来たエプーリスは、健康な歯でも抜歯の対象となります。
その他、妊娠中に気をつけたいことをお話します。

①喫煙を辞めましょう。
タバコには100種類以上の有害物質が含まれているそうです。
とりわけ、ニコチンと一酸化炭素は、赤ちゃんへの栄養や酸素の供給を阻害します。妊娠初期には流産の可能性を高め、中期以降は、赤ちゃんの発育を遅らせたり、低出生体重児になる確率が高くなります

②アルコール
妊娠中のアルコールは、タバコほどではありませんが、胎盤を通して、お腹の赤ちゃんに移行します。
一般の有害物質は、胎盤を通過できませんが、アルコールや麻薬等は、赤ちゃんに移行してしまいます。母親が酔えば、赤ちゃんも酔ってしまいます。ですから妊娠中はアルコールを控えるべきです。たまにコップ1杯のビールを飲む程度であれば心配いりません。

③環境とアレルギー
食物アレルギーは、遺伝によるアレルギー体質と食生活や住環境が原因と考えられています。
妊娠後期の食事制限や代用食品には、賛否両論ががあり、まだ解明されていません。
しかし、毎日、何個もの卵を食べたり、牛乳を水代わりに飲むような極端な食習慣は改めた方が良いと思われます。
偏った食生活は是非改善することをお勧めします。
掃除や換気をこまめにして、花粉やカビ、ハウスダスト等の抗原を少なくする様にして下さい。

次回は「妊娠時に起こり易い歯と口の病気」についてお話しします。
院長:荒内