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乳児期の口の手入れ(管理)3

著者:デンタルオフィス湊

おはようございます。
熱戦だったリオオリンピックも終わりました。選手たちも帰国しました。毎日、テレビで日本選手の活躍を応援して楽しませていただきました。
前回の東京オリンピック(1964年)の時は小学生だった私は、当時の事をよく覚えていません。両親に連れられ国立競技場まで行き、聖火を背景にした写真が残っています。又、東京でオリンピックが開かれるなんて!今からワクワクしてしまいます。4年後の東京はどんな街になっているのか楽しみです。
台風が次々と日本列島に上陸しています。そろそろ夏休みも終盤ですね。
では今週のコラムを始めたいと思います。

今回も【乳児期の口の手入れ】の続きです。

乳臼歯の生え始め(生後1年から1年半頃まで)

1歳を過ぎて離乳も完了期に入った頃には、乳歯の前歯も生え揃い、奥歯が生え始めます。奥歯は溝があって臼(うす)状の形をしているので臼歯(きゅうし)と呼ばれます。最初に生えてくる奥歯は第一乳臼歯といい、通常は乳犬歯をとばした位置に生えてきます。第一乳臼歯が生えてくると、噛む部分、つまり臼にある溝の部分に食べカスや歯垢(プラーク)が溜まりやすくなり、歯ブラシを使った掃除が必要になってきます。
そこで、3歳までに口腔内フローラを形成してあげる事が重要です。
口腔内フローラとは、虫歯になりにくい口腔内にするという事です。虫歯菌は主に御両親や身近な人から移されます。ですから、噛んで与えたり、使った箸やスプーン、歯ブラシ等を3歳未満の子供に与えないことが重要です。3歳までに口腔内フローラを作り上げてしまえば、その後にミュータンスに代表さる虫歯菌が口の中に入って来ても、殆ど生息できない為、虫歯になりにくくなります。
口腔細菌の中でも虫歯の原因菌と考えられているミュータンス菌などは、乳臼歯が生えてくると口の中に定着しやすくなると言われています。食べられる物の種類も増え、菓子類を食べ始めたり、甘味飲料などを飲み始める子も多い時期です。1日1回はきちんと歯を磨く習慣をつけましょう。

歯磨きタイム

ただし、まだ長時間口を開けておとなしく磨かせてくれる年齢でもなく、自分でやろうとしても歯ブラシを口に入れて遊んでいる程度でしょう。この時期には、親や兄姉が磨くところなどを見せながら、自分だけがやられるものではなく、皆がやるものだという雰囲気づくりをして、1日1回は歯磨きの時間を設定して日常生活の中での習慣化をはかっていきます。
まだ歯の数も少ないので、要領さえ覚えれば歯磨きも短時間ですみますし、寝る前だと機嫌が悪くなりやすい子では、夕食後の余裕を取れる時間帯を歯磨きタイムにするとよいでしょう。

寝かせ磨き

親が磨いてあげる時の基本姿勢は、親が横座りかあぐらをかくようにすわり、膝の中に子供の頭を入れて安定させます。この姿勢なら、子供の頭部の安定がはかれるばかりでなく、口の中も見やすく、歯ブラシを持たないほうの手で唇や頬をよけて磨けるため、歯ブラシの毛先が歯にキチンと当たっているか確かめられ、歯肉や唇に毛先が強く当たるのを防げます。
歯ブラシはヘッドが小さめで、毛先も短めの物を選び、鉛筆を持つようにまたは指先を使って把持して、毛先を歯の表面にきちんと当てたら軽い力で細かく動かして磨きます。親が気負いすぎて肩に力が入ってしまうと、歯ブラシにもつい力が入り過ぎて強い力で磨くことになり、毛先が歯肉に当たって痛かったりすると子供が歯磨きを嫌がる原因となることがあります。軽い力で手早く磨くことがポイントです。

歯磨きを嫌がる

嫌がって騒ぐ場合は、何が原因かを考えてみる事も必要です。寝たり押さえられたりするのが嫌なのか、口の中に何か入れられるのに違和感があって嫌なのか、ゴシゴシ磨きすぎて痛いから嫌なのか、原因によって対応も変わってきます。磨くときの姿勢や磨き方を工夫してみたり、どうしても歯ブラシ自体に抵抗の大きい子なら、指やガーゼから慣らす段階に戻してみるなどの対応が考えられます。食生活面で気を付けていれば、すぐ虫歯が出来る時期ではありません。また、多少嫌がっても磨かせた場合には、磨き終わった後で良くできたという気持ちを込めて十分褒めてあげましょう。

歯ブラシに興味を持ち始めたら

歯ブラシに興味を持ち始めると、自分で歯ブラシをくわえて磨こうとする子も出てきます。歯磨きへの意欲を育てる面では重要ですので、まず自分で気のすむまで磨かせて、その後で親が磨いてあげましょう。ただし、歯ブラシを口にくわえたまま立ったり、歩き出したりすると、まだ転びやすい時期なので歯ブラシで口の中に怪我をする事があり、危険です。歩き出そうとしたら、歯ブラシを離させた方が無難です。歯磨きに関しては親を主体としての習慣づけの時期ですので、歯の汚れを徹底的に取り除こうというより、食べ物や食べ方に気を付けて、例えば、野菜から食べたり、30回、噛んで食べる事を心がけたりして、歯の汚れや細菌を増やさない事の方が重要とも言えます。

母乳もそろそろ卒業

コップから水分が摂れる様になれば、哺乳瓶の必要も無くなりますし、口の機能も吸う事から咀嚼する事に発達してきているので、母乳もそろそろ卒業です。3回の食事と睡眠、運動(遊び)などを含めた生活のリズムを作っていく時期ですので、間食や甘味飲料の摂り過ぎや就寝前の飲食が習慣にならないように気を付けたいものです。
風邪をひいたり熱がでた時に、小児科で薦められてイオン飲料やスポーツ飲料を飲み始め、普段でも水代わりに飲んでいる子を見受けます。これらの飲料にも糖分がかなり含まれているため、頻回飲んでいたり、特に離乳の時期になっても哺乳瓶で飲んでいると、虫歯が出来やすくなります。ジュースや乳酸飲料、炭酸飲料などには注意を払っていても、イオン飲料やスポーツ飲料は体に良いというイメージで飲ませがちなので、気を付けたいものです。

親の生活時間の見直し

また、都会では親の夜型生活を反映して、就寝時間の遅い子が増えています。親に合せて夜の11時、12時まで起きている子も珍しくありません。親の都合に合わせたこのような生活が乳幼児の生体リズムに適してるとは考えられませんし、夕食から就寝までの時間が長いと就寝前の飲食習慣が付きやすくなります。また、寝るとき愚図るので哺乳習慣が止められないケースも見られます。両親で十分検討して、生活時間を見直す必要があるでしょう。

「乳幼児の口の管理」は今回で終わりです。
次回からは「幼児期」について書いていきたいと思います。

歯科医師:熱田