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    第55回幼児期の歯と口の治療

    著者:デンタルオフィス湊

    おはようございます。新型コロナウイルス感染の拡大が急速になってきました。政府の要請で、小中高校の春休みが前倒しになりました。用意の出来ていなかった各家庭がパニックになり、デマで「トイレットペーパーが不足です。」といことが拡散され、店頭からそれが無くなりと、あれよあれよという間に世間が変わってしまいました。早く、この感染症が収束してくれることを願がっております。

    今回は院長先生のコラムをお届けいたします。

    • 第54回です。今回は「幼児期の歯と口の治療」についてお話しします。おはようございます。新型コロナウイルス感染症の拡大で急遽春休みが前倒しになり、

    まず初めに、治療を嫌がる幼児期をどのように治療するかについてお話しします。子供は心身の発達がまだ未熟です。精神面や情緒面においても、年齢や子供さんによって発達状況が違います。よって歯の治療を嫌がる子供さんへの対応も、それに合った対応が必要となります。歯の治療を好きな人は殆どいません。勿論、子供さんも同じです。

    幼児期の治療で欠かせないのは、保護者の方の協力です。と同時に患者さんと保護者の方と歯科医の信頼関係が必要不可欠なものとなります。早速、幼児期の治療について子供さんの心身の発達段階を考慮して、年齢別に説明したいと思います。何よりも大切なことは、歯科治療をトラウマ(心的外傷)を与えない事です。もしトラウマを与えてしまうと、大人になっても歯科治療を避けるようになってしまいます。

    1,3歳未満の子供さんの治療について

    この年齢の子供さんは、母親への依存症が強く、見慣れない人や物(治療用器材)に対して、好奇心よりも、恐怖心の強いのが特徴です。又、言語発達や言語理解も未発達です。社会性も未発達な為、自己中心的です。更に歯科医が自分の歯を治してくれる人だと認識出来ず、子供さんの恐怖心を取り除くことは困難です。そこで、子供さんと話したり、遊んだりして受け入れてもらうことが先決です。決して治療を急がない事が大切です。お母さんを交えて、器具を見せながら説明したり、エアや水を出して、恐怖心を少なくしていきます。慣れてきたらエンジンやタービンにバーを装着しないで、音やエァ、水に慣れてもらいます。いよいよ治療が出来るようになったら、治療中の事故が起こらない為にあらゆる手段を使います。

    私の個人的な意見ですが、基本的に強制用具は使いません。

    強制用具とは、子供さんが急に動かないように、体をネットで包んだり、ビニールに空気を入れて体を固定する装置等を言います。

    又、歯科衛生士さんやアシスタントの方に、子供さんの手足を抑えさせたり、口を開かせるために開口器を使ったり、子供さんの鼻をつまんだり等、無理矢理、治療を強行しません。

    とにかく子供さんに好かれること、信頼されること、トラウマを与えないようにしています。具体的には、風船を使ってバルーンアートを一緒に作ったり、折り紙、お手玉紙ひこうきを飛ばして遊びます。又、子供さんがプリキュアが好きなら、プリキュアで遊んだり、アンパンマンが好きな子供には、アンパンマンに出て来るバイキンマン等のぬいぐるみで遊びます。そして、小さな成功体験を積み重ねて自信をつけるようにしています。いよいよ治療で出来るようになりましたら、目標を1分間とし、お母さんやアシスタントの方に数えてもらい、その間に治療を終えるようにします。

    2、3才~4才の子供さんの治療

    3才を過ぎると、精神的に発達、言語の発達が著しくなります。自分を認識できるようになり、社会性も芽生えてきます。他人とのコミュニケーションもできるようになりますが、反抗的な面も出てきます。あくまでも子供さんを中心に治療を進めていきますが、子供さんの我儘を助長させないようにしなければなりません。又、子供さんが、歯科治療で痛いとか怖い経験があったり、経験が無くても、痛いとか怖いと思い込んでしまうと、火が付いたように泣き叫んで、治療を頑なに拒絶することがあります。このような時は、歯科治療はそんなに痛くない、怖いものでは無い事を教えなければなりません。

    具体的な方法としては、まず使う器具や薬(フッ素や、サホライド、J等)を子供さんに見せて、痛みや怖さが無い事を伝えます。そして、その器具を口の中に入れて痛くない体験をしてもらいます。この時も皆に3つ数えてもらいます。上手く出来たら、徹底的に誉めます。

    上手く行かなかった時は、その努力と勇気を挙げて励まします。保護者の方にお願いですが、もし子供さんがお母さんに依存し過ぎるようでしたら、待合室で待っていただく事もありますので、ご協力をお願い致します。どんな形であれ、治療が終わっ たら誉めてあげて下さい。そして子供さんに自信をつけさせて下さい。子供さんに自信がつくと診療がスムーズに進むだけでなく、より難しい治療が出来るようになります。間違っても、子供さんを非難したり脅したりしないで下さい。又、子供さんに悪い事をしたり、勉強しないと歯医者さんに連れて行くよ。」等を言わないでください。この一言で、歯科医の努力が水の泡になってしまいます。

    3、5才の子供さんの治療

    この頃になると、社会性もかなり発達し、通常は歯科治療に対して適応できるようになります。しかし、歯科治療に対してトラウマ(心的外傷)があったり、人から「歯科治療が物凄く痛かった。」とか「とても怖かった。」等の話を聞くと、注射や抜歯、歯を削ること等に極端な拒否反応を示します。こういう時は、治療を最優先しません。子供さんの恐怖心を少しずつ取り除くようにします。そして、子供さんが好きなことや得意なことを一緒に話したり、やったりして仲良くなって子供さんからの信頼を得る努力をしていきます。

    虫歯治療の場合は、むし歯の進行止を付けたり、一次的に虫歯の穴を封鎖したり等、応急処置を取ります。どんな簡単な処置でも子供さんが出来たらスタッフ全員とお母さんで徹底的に誉めるようにします。子供さんに自信と達成感を持ってもらうようにしています。勿論、バルーンアートや折り紙、剣玉、お年玉等で緊張感を和らげるようにしています。絶えず、お母さんやお父さん等、保護者の方の御協力を得ながら進めてますが、子供さんを極端に叱ったり、腹を立てたり逆に子供さんの甘えを必要以上に許してしまう時は、待合室で待って頂くようにしています。自分達がやれる事を全てやっても、治療できない時は、大学病院や小児歯科専門医に紹介状を出すようにしています。むし歯の多い子供さんは食後、特に寝る前の歯磨きの習慣が無かったり、ダラダラ食いをしている事が指摘されています。又御両親もむし歯が多い傾向があると言われています。

    治療をする前に、いくつかの治療計画を保護者と子供さんに説明しながら、質問を受けています。治療方針が決まって、子供さんが治療出来そうでしたら、初日から始めます。治療はできる限り1回で終わらせるようにしていますが、子供さんの状態を見ながら進めて行きます。又、治療をすると、痛みが無くなったり、噛めるようになったりする事を子供さんに実感してもらうようにしています。いずれにしても、患者さんにトラウマを与えないように細心の注意をすることが何よりも大事だと思っています。

    今回は、ここで終わりにしたいと思います。

    次回55回はX線や麻酔についてお話ししたいと思います。