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膠原病と歯科治療 ─全身疾患と歯科治療⑨-2

著者:デンタルオフィス湊

こんにちは。
院長の荒内です。

前回に続き、膠原病の中のひとつである慢性関節リウマチと歯科治療についてお話させていただきます。

慢性関節リウマチ

慢性関節リウマチとは、全身の免疫異常に伴って、関節に以上が起こり、関節の腫れや痛みが生じ、徐々に進行して、長い年月が経つと、関節が変形して重大な機能障害を引き起こす病気です。
この病気の特徴を要約します。

①末しょう関節から始まる変形を伴う左右対称の慢性の関節炎で、X線上、骨萎縮、骨破壊が見られる

②関節外の症状として、貧血や皮下結節等、様々な症状が認められるが、生命に対する予後は一般的に良好である

③原因は明らかではないが、IgGに対する抗体(リウマチ因子)が見つかるので、自己免疫疾患と考えられている

④膠原病の中では、圧倒的に罹患頻度が高く、人口の約0.5%-1%前後罹患している

⑤罹患年齢は、どの年齢層でも発病しうるが、20歳‐60歳が多く、平均発病年代は30歳で、どちらかというと若年者の疾患である

⑥男女比は1:3で、女性が多く、この比率は日本でも欧米でも同じである

⑦発病頻度は人口の約0.5%で欧米の約半分以下である

さて、歯科治療上の問題点とその対策について、簡単にお話ししたいと思います。
この病気にかかると、手首や手指関節の変形拘縮や痛みが起こります。
そのため、歯磨き(ブラッシングやフロッシング等)が十分にできなくなるため、歯周炎やむし歯になりやすくなります。
炎症症状の強い活動期を避ければ、通常の歯科治療はできます。
しかし、慢性関節リウマチにかかると、顎関節にも症状がでることがあります。
こういう場合は、長く口を開けていられないので、時々治療を休んでもらうようにします。

副腎皮質ステロイドホルモン療法

次は、副腎皮質ステロイドホルモン療法を受けられている患者さんについてお話しします。
副腎皮質ステロイドホルモン療法を受けている場合や、最近まで受けていた場合、副腎の機能が低下していたり、予備力が低下している可能性が大きいです。
このような状態で抜歯や手術を受けると、ストレスや手術の侵襲により、副腎クリーゼというショックを起こすことがあります。
そのため、抜歯前にステロイド剤を増やしたり、再服用が必要です。
また、ステロイドや免疫抑制剤を服用中は、細菌感染しやすいので、手術や抜歯前後に抗生剤や抗菌剤を服用することがとても重要です。
そのほか、人工関節置換手術を受けているときは、抜歯などの手術後に起こる菌血症から人工関節部への二次感染を防ぐためにも、抗生剤や抗菌剤の服用が重要です。

消炎鎮痛剤を連用している場合は、歯科治療前に歯科医に現在連用している薬を見せることが大切です。
消炎鎮痛剤を二重、三重に服用しないように注意が必要です。

次回は血液疾患と歯科治療について、お話させていただこうと思います。

院長:荒内