味覚減退や味覚不全が現れる全身疾患

2020年1月22日


おはようございます。つい数日前に、北海道、札幌市に積雪があったと、テレビのニュースで言っていました。それまでは、「札幌雪まつり」が出来ないかもしれない程の雪不足だったようです。他の地域でも雪不足でスキー場が開けない所があり、宿泊施設ではキャンセルが発生しているようです。冬はいつも通りの寒い冬になった方が好いのですね。

今回は院長先生の第52回、コラムをお送り致します。

「味覚減退や味覚不全が現れる全身疾患」

1、風邪症候群

風が治った後、一時的に味が分からなくなることがあります。

2、舌の病気

地図状舌、毛舌、舌炎、舌の片側の萎縮等でも、味が分からなくなることがあります。

3、耳の病気

①真珠腫性中耳炎(偽コレステリン腫pseudo chole steatoma)

この病気は、偽コレステリン腫、あるいは仮性真珠腫とも言われます。仮性とか偽と呼ばれる理由は、真性コレステリン腫という病気があるからです。これは脳底部の脳軟膜に発生する腫瘍です。これに対して偽コレステリン腫(真珠腫性中耳炎)は、主に中耳の炎症性産物による病気です。鼓膜の一部が中耳腔に内陥し、入り込んだ上皮の落屑が陥入部位に貯留し、真珠のような丸い塊が中耳に出来て、これにより周囲の骨が破壊されて、難聴、めまい、顔面神経麻痺、細菌性髄膜炎、そして味が分からなくなる疾患です。

②慢性化膿性中耳炎(Perforation of Tympanic Membrane)

これは、、耳の怪我や急性中耳炎或いは、鼓膜チューブ挿入術の後等に起こったりします。症状は、軽い難聴や耳漏(耳だれ)がみられます。耳を触り過ぎたり、耳に水が入ると感染して、膿の混ざった耳だれが出ます。鼓膜に孔が開いている状態です。

治療は、投薬(抗生剤や抗真菌剤)や手術をします。

予防としては、お風呂やプールに入る時は、耳栓をする事、又、耳かきや綿棒での耳掃除は厳禁です。

③ラムゼーハント症候群(ミオクロース性小脳性協働収縮異常症)

これは末梢性、顔面神経麻痺を伴う帯状疱疹の1つです。原因は水痘帯状疱疹ウイルスの感染によるものです。子供の頃に初感染すると、水ぼうそう(水痘)になります。この症状が治っても、ウイルスは、体の色々な神経節の中で生き続けます。

耳を中心に起こった、この帯状疱疹をラムズハント症候群、或いは耳性帯状疱疹(耳ヘルペス)と言います。

④中耳癌

聴器とは聴覚に関する臓器の事で、外耳、中耳、内耳に分類されます。これら3つのどこかに出来る癌を言います。

外耳とは耳介から外耳道のことを言い、中耳とは鼓膜からアブミ骨底までも言い、鼻と交通しています。内耳とは、蝸牛から三半規管までを言います。100万人に1人に起こると言われる極めて珍しい病気です。頭頚部領域の癌の1%~2%と報告されています。

⑤耳の手術の後遺症

耳の手術の後遺症でも味覚に影響を与えることがあります。

4、頭や顔の怪我

側頭骨や頭蓋骨等の骨折でも味が分からなくなることがあります。

5、脳と神経の病気

①脳血管障害(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)

②脳腫瘍(聴神経腫瘍、小脳橋角部腫瘍等)

③抹消顔面神経麻痺

6、心の病気

 ①大うつ病

うつ病の正式名称は、英語を直訳した為、「大うつ病性障害」と言います。うつ病は大きく2つに分けられています。1つは、いつも抑うつ状態だけが起こる「大うつ病性障害」2つ目は、抑うつ状態と躁状態の両方が起こる「双極性障害」です。

この2つの鑑別は、治療薬も異なりますから、極めて重要です。

 ②神経症性障害

一般にノイローゼと言われるものです。精神医学では、これを伝統的に「神経症」と呼んできました。近年、国際的に精神医学的な名称を整理しようという動きがみられます。神経症は、神経症性障害、ストレス関連障害、或いは身体表現性障害等の名前が付けられています。

7、消化器の病気

①栄養の吸収障害を起こす病気。例えば、肝臓病や膵臓病等です。

②慢性胃炎。

③癌治療の為の胃や腸の切除など。

8、腎臓の病気

腎不全から尿毒症へと進むと味覚障害が起こることがあります。

9、血液の病気

鉄欠乏性貧血が原因で、味覚障害が起こることがあります。

10、ホルモンの病気

 ①甲状腺機能低下症(橋本病、クレチン病)

バセドー病は甲状腺機能が亢進する病気ですが、橋本病はその逆の病気です。

 ②急性副腎不全(副腎クリーゼ)あ

これは、アジソン病に罹っている時、感染や心労、手術等がきっかけで起こり、ショック状態に陥ったものを言います。

ショック状態に陥ると、副腎皮質ホルモンの分泌が低下します。生命にかかわるとことがありますから、ただちに大量の生理食塩水とブドウ糖、副腎皮質ホルモン(ステロイド)による治療が必要となります。

 ③下垂体前葉機能低下症

下垂体前葉ホルモンの分泌低下が起こる病気で、原因は2つに大別されます。1つ目

は下垂体自身の障害、2つ目は下垂体機能をコントロールする視床下部の障害です。

分泌低下したホルモンの種類と程度によって、単独ホルモン分泌低下症と複合ホルモン分泌低下症に分けられます。症状は分泌低下したホルモンの種類と量によって様々です。

11、薬剤の使用

①現在、分かっている味覚障害を起こす主な薬剤を列記します。

抗炎症薬、抗リウマチ薬、高圧利尿剤(薬)、中枢神経作用薬、消化器官作用薬、ホルモン剤、代謝性医薬品、抗生物質、抗癌剤

②含嗽剤(うがい薬)、トローチ、メントール等では、1時的に味覚異常が起ることがあります。

12、放射線治療

口腔、顔面、のど等の腫瘍の治療の為に放射線照射を受けると、味覚異常が起ることがあります。

13、遺伝性の病気

①ターナー症候群

これは、遺伝子をのせる染色体のうち、性染色体であるX染色体が足りないことで発症する女性の病気です。本来、女性の細胞には、2本のX染色体が備わっています。それが何らかの原因で、1本が完全に或いは一部分が欠けた状態をターナー症候群と言います。女児の出生、約4,000例に1列の割合で起こると言われています。

②家族制自律神経失調症(ライリー・デイ症候群)

この病気は、遺伝子から蛋白質を作る過程に関与する「IKBKAP遺伝子」の変異により生じ、正しい設計図のコピー及び蛋白質が作られないことで発症する病気です。ドイツやポーランドに住んでいるユダヤ人に多く見られるそうです。保因者は、彼等の約1%と言われています。多くの患者さんは成人するまでに慢性呼吸器疾患で亡くなられるそうです。今まで、全く治療法がありませんでしたが、最近、京大医学研究科の荻原正敏教授が率いる研究グループが、東大や東京医科歯科大学と共同研究を行い、正しい設計図のコピーと正常な蛋白質を作る化合物を発見した。

③偽副甲状腺機能低下症

副甲状腺ホルモン(PTH)が正常に分泌されているにもかかわらず、低カルシウム血症や後輪血症等、あたかも、副甲状腺機能低下症と同じ症状を現す病気です。

④嚢胞性線維症

全身の粘膜の塩化物イオンの輸送能力が弱い遺伝性の病気です。気管支や消化管、水管等が粘り気の強い分泌物で詰まり易くなり、様々な症状が現れます。日本では出生数60万人に約1人という稀な病気で、「指定難病299」になっています。

今回は、ここで終わりにしたいと思います。

次回53回は、顎が痛む病気を中心にお話しさせて頂こうと思います。