成人期の歯と口の健康作り・歯周病について

2020年1月17日


おはようございます。成人式も済み、1月が半分を過ぎました。今年は暖冬で、東北地方や北海道でも雪が殆ど降っていないそうです。雪まつりなどが出来るか心配されています。

又、今年は何と言ってもオリンピックですね。私は、去年、市川に引っ越してきて東京に行く事がとんと無くなってしまいました。一度、国立競技場の側まで行って、新しいそれを、観て来たいと思っています。

今回は熱田がコラムを担当させて頂きます。

「成人期の歯と口の健康作り」の続き

⑤歯周病の発症と危険因子

病気が起こるには、その原因となる因子とその病気が起こることを予測できる因子が必用です。この両者をまとめて危険因子(リスクファクター)と言います。歯肉炎は、プラーク量が増えることによって起こります。同じ量のプラークが付いていても歯肉炎が起きない人と起きる人がいます。

一般的に、歯肉の炎症はプラークの直接的な作用によっておきますが、個人個人の歯周組織の環境や抵抗力が違いますので、病気の起こり方や進行には個人差が出てきます。稀に年長の方で、口の中が不潔であっても歯肉炎程度で、歯周炎になっていない人がいますが、歯周組織の抵抗力が強いのでしょう。

歯周病が起こるのに、絶対必要な危険因子はプラークです。これに他の危険因子がリンクすると歯周病が起こります。危険因子が多くなればなるほど歯周病になる確率も高くなります。

歯周炎になる危険率は、プラーク中ある種の細菌(Porphyromonas gingivaris,Tannerella forsythensis)、年齢、糖尿病そして喫煙が合併すると上がる事が分かっています。

しかし、必要以上に歯周病を恐れることはありません。誰でも、今すぐにでも歯周病になる危険因子を取り除くことができます。ブラッシングする事でプラークを除去すればよいのです。その効果は数日で出てくるはずです。1ヶ所30回の歯磨きとフロッシングや歯間ブラシで磨いて下さい。

効果が出ない場合は、歯科医院で歯磨き指導や歯周病の治療を受けましょう。

⑥食習慣と歯周病

むし歯や歯周病は文明病と言われています。人が火を使い、食物を調理し、柔らかい食物を食べるようになり、砂糖を使う事によってプラークが付きやすい口腔環境を作ったのです。

しかし、猿人や古代人の歯槽骨に歯周病が見られたことから、人と歯周病とのかかわりは大変古くからあったことが判っています。古代人の歯周病の状態を比較すると身分の高い人ほど症状が悪化していることから、美食をしていた人ほど歯周病に罹患していたと考えられます。

木の芽や皮、葉っぱなどの自然食をを食べている野生の猿の口の中を見ると、歯はかなり擦り減っていますが、歯周病はほとんど見られません。しかしペットとして飼われ、ソフトフードを食べているサルの歯にはプラークや歯石がたくさん付いており、歯肉には炎症が見られ、口臭もあります。

家庭で犬や猫を飼っている方は、ペットの口の中を見て下さい。歯にプラークや歯石が見られ、歯肉に炎症があったり、歯がグラグラしていることもあると思います。

古代人が食べていたと同じ内容の食事を作り、現代人が食べると、硬くてたくさん噛まなくては飲み込めませんので、時間がかかったり、顎が痛くなったというデータがあります。反面、現代食は、余り噛まなくても簡単に飲み込めますので、食事の時間は短くて済むのが特徴です。

しかし、物を噛むという機能面から見ると歯や歯周組織に加わる力が少なくなって、抵抗力が落ちたり、顎の発育が悪くなることにつながります。また、唾液の分泌も減り、口の自浄作用も減るので、むし歯や歯周病が増える原因にもなるのです。間食にキャラメルなどの砂糖の入ったお菓子を食べると、プラーク量が増えると言われています。

このように、歯周病は食事の内容(質)や食習慣の影響を強く受けるものと言っていいでしょう。

⑦早期発見・早期治療

成人期の人が歯科健診を受ける機会は極めて少ないので、毎年検診を受けている人は別として、高等学校時代に歯科検診を受けたきりになっている人は、歯や歯肉に痛みがないからと言って正常とは限らないので安心していてはいけません。むし歯や歯周病は、始めのうちは痛みなどの自覚症状が出ないのが特徴で、無症候性疾患(silent disease)と言われています。また自然治癒もありません。歯の裏側や奥歯、さらに歯肉の下の状態は目で見ただけでは判りません。素人判断は危険です。早めにむし歯や歯周病の検査を歯科医院で受けましょう。病気治療の原則は、早期発見・早期治療です。

⑧歯周病の予防

それでは、右を向いても左を見ても砂糖をふんだんに使ったソフトフードや、硬さはあっても簡単に噛めて飲み込める食品が氾濫する現代社会において、歯周病を予防する事はできるのでしょうか。

◆一次予防

本来予防とは、病気が起こる前にその発病を防ぐ事をさします。従って、むし歯や歯周病のない人が口腔清掃に注意し、食習慣を含む生活習慣に気を付ければ、むし歯や歯周病に罹ることはないのです。これを「一次予防」或いは「初期予防」と言います。

◆二次予防

歯や口の機能を遺憾なく発揮するため、それぞれ正常であることが望ましいですが、正常な状態を生涯にわたって維持するのは極めて難しいのです。しかし、病気があっても(これは正常でなくてもと言い換えることができます)健康であれば、歯や口が機能するのに支障が出ないのです。また、病気が初期のうちであればあるほど、病気であることに気づきにくいので、できれば3カ月毎に1回、少なくても半年に1回は、「歯の定期検診」をなさってください。

最近、「歯ブラシで磨くと血が出る」とか「歯ぐきがしょっちゅう腫れる」などの症状があって、歯科医院に行く人もかなりいます。この場合、歯周病治療を行って歯周病の進行を止めるので、本当の意味での予防にはなりません。しかし、現在では、病気が重度に進行することを防ぐという意味でも予防という用語を使います。すなわち、治療イコール予防となります。これを一般的に「二次予防」と言います。

◆三次予防(再発予防)

病気になっても適切な処置をすれば、正常に戻ります。歯周病の場合は軽症(歯肉炎)であれば、ほぼ完璧に正常に戻るといってよいでしょう。しかし、歯周炎の場合は、重症になればなるほど、健康になっても、正常には戻りません。

より重症になると歯を何本か抜いたり、削られたり、固定されたり、取り外しの入れ歯(義歯)を入れなければなりません。歯は削られたり、無くなったので、正常では無くなりました。また、歯肉の位置が下がって歯の根(歯根)が出ています。目では見えませんが、歯を支えている骨も下がっていることになりますので、正常ではなくなったのです。

それでも、歯周病の治療後、歯肉の炎症は無くなり、むし歯は修復され、健康になり、歯や口の機能を回復する事ができます。

病変の理想的な治療法は、病気の原因除去療法です。しかし歯周病にはこの概念を当てはめるのは難しいのです。なぜならば、歯周病の原因はプラークであり、噛み合わせであり、年を取るにつれて全身状態が少なからず関与してきますので、これらの原因因子を完全に「0」にすることはできないのです。従って歯周病治療後も患者さんの家庭でのセルフ・ケアと、定期的に歯科医院に行って歯周病が管理されているかどうかチェックを受ける必要があります。この事を「三次予防」あるいは「再発予防」といいます。

◆歯周病は予防・コントロール可能な病気

このように見てくると、再発の危険性は歯周病に罹った経験のある人、全員が持っていることになります。また、歯周病に罹ったことのない人でも、年を取るにつれて歯周病になる危険率はアップします。さらに、糖尿病や高血圧になると、全身状態も変化しますので、他の危険因子も増える可能性があります。

歯肉の炎症の最大の原因であるプラークは、完全には除去できなくても、歯周病を予防できます。患者さんが食習慣や生活習慣を改善し、自己管理する事によってその量を減らし、歯周病に関連する細菌が増えないようにコントロールすれば、歯周病も予防できます。

今回はここまでとさせていただきます。次回は「成人期の歯と口の健康作り・2、歯周病治療の原則」をお送りします。