苔の生えたような舌になる全身疾患(口腔内の症状が全身に出る疾患の続き)

2019年12月13日


おはようございます。大分、気温も下がって冬に入ってきました。このコラムがのる頃には関東地方の紅葉が終わりに近づいていると思います。

話は変わりますが、ここのところ関東地方で地震が頻発しています。当診療所でも非常食などが足りているのかを確認しています。気象庁によればこの地震は東日本大地震の揺り戻しなのだそうです。けして大地震の前触れではないとのことなのですが・・・。これを機会に災害用品を見直しておこうということになりました。それらを使わないようにならないよう願っています。

今回は院長先生のコラムです。

第50回です。今回も「口腔内に症状が出る全身疾患」の続きをお話します。

10、苔の生えたような舌になる全身疾患

①食事の影響

点滴や胃瘻等で栄養を補っていて、口から食事をとっていない時や流動食が中心で固形食とっていない時又は食事の回数が少ない時に、舌に苔のようなものが発生します。これを舌苔と言います。健康な舌は淡いピンク色をしています。舌の中央に薄い舌苔がありますが、舌の赤味ががかった色が透けてピンク色に見えます。舌苔とは鏡で舌を見ると、舌の中央を中心に白く見える汚れが付着しているのが見えます。これを舌苔と言います。これは歯垢とおなっじで細菌の温床です。苔の正体は、剥離した表層上皮や食物残渣、角質化によって長くなった糸状乳頭間に棲息する微生物叢、壊死物質そして炎症細胞等です。

②菌交代症(microbial subctitution)

菌交代症とは、化学療法剤によって正常菌叢が壊されて緑膿菌やカンジダ等が大量に増殖して、新しい感染症になる事を言います。化学療法とは、化学物質を医薬品として用いて「感染症」あるいは「悪性腫瘍」の治療を行うことを言います。これは病原微生物(細菌)や悪性新生物(癌)と正常ヒト細胞との化学療法薬に対する感受性の差、つまり選択的な毒性を利用する療法ですこの療法は1909年に、P.Ehrlichが梅毒の薬を発明して、初めて確立されました。所で化学療法についてのての用語を整理したいと思います。

病原微生物に対して殺菌作用或いは発育抑制作用(静菌作用)を持つ化合物や抗癌又は抗腫瘍活性を持つ化合物のうち化学的に合成されたものを「化学療法薬」と言います。この作用を微生物が産生したものを「抗生物質」と呼んでいます。又、微生物由来の化合物の合成類緑体も「抗生物質」に含まれます。代表的な感染症の化学療法薬には、その骨格に基ずいて、サルファ剤、キノロン剤、アゾ―ル剤等があります。

「抗生物質」と言う用語は、ストレプトマイシンを発見したワックスマン(高峰譲吉のお弟子さん、米国のRutgers大学)によって、製法上と作用上(薬効)の2つを厳密に定義しました。しかし、現在は上記のように少し変更されています。カビの生育を抑えるアムホテリシンやミカファンギン等は抗真菌性抗生物質と言われています。

また、1953年に梅澤濱夫博士がザルコマイシンを発見しました。これはバクテリアやカビに対する抗微生物活性と共に癌にも効果が認められました。ヒト子宮頸癌由来のHeLa細胞に阻害活性があり、世界初の抗癌薬となりました。北里研究所の秦 藤木博士のマイトマイシンC、イタリアのアルカモネ博士のアドリアマイシン(現在のドキソルビシン)等も抗腫瘍性抗生物質と呼ばれています。

現在、抗菌薬の中に抗ウイルス薬と抗真菌薬は含まない事になっています。抗菌薬(antibacterial agents)は「バクテリアの生育を抑える薬」と言う意味です。世界初の抗生物質は1922年に、英国の細菌学者アレクサンダー・フレミングが発見しました。

これら抗菌薬の出発点は、ドイツのコッホとフランスのパスツールだと言われています。

この分野での日本人の活躍は、目を見張るものがあります。当時のヨーロッパでは、人種差別的な風潮が色濃く残ってる時代ですから、ノーベル賞を受賞する位の研究でなければ、殆ど相手にされなかったようです。そうゆう厳しい現実の中、北里柴三郎(1853~1931)はドイツのコッホに、秦 佐八郎や志賀 潔は同じくドイツのパウル・エーリッヒに師事し大きな研究成果を上げました。

➂慢性の感染症

結核やエイズ(HIV感染症)、慢性鼻炎、慢性肝炎等があると、舌に毛のような苔ができたりします。

④悪性腫瘍

舌や咽頭部の癌や肉腫等によっても毛舌なったりします。

➄加齢

老人が衰弱すると毛舌になることがありまあす。

➅ヘビースモーカー

タバコを吸い過ぎる、いわゆるチェーンスモーカーの方にも毛舌が見られたりします。

11、舌に白い斑点が出来る全身疾患

①白板症

舌や粘膜、そして粘膜と皮膚の境目に出来ます。白色で盛り上がりの無い病変です。時として、前癌状態の時もあります。

➁エイズ

舌や粘膜にカンジダ(白い苔のように見えるもの)や毛様白斑症(白いまだら模様に見える物)等が出来ることがあります。

③舌の咬傷やヘビースモーカーにも起こることがあります。

12、溝状舌(舌に溝が出来る事)

殆ど病気ではありませんが、横に走る溝は、ダウン症の患者さんに見られることがあります。

13、地図状舌(病変では無いので心配いりません。)

これは古い乳頭と新しい乳頭の入れ替わりの時に見られます。病気の徴候ではありません。季節の変わり目に、犬や猫の毛が生え変わる時と似ています。

14、正中菱形舌炎(病変ではないので心配いりません。)

乳頭が無くなる為に、舌の中央に菱形のような模様が出来ますが、病変ではありません。

今回はここまでとさせていただきます。次回もこの続きとなります。