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続・要介護者に起きやすい、食べる機能の障害と食事の問題 9、障害の時期による対応の 違い

著者:デンタルオフィス湊

おはようございます。梅雨が明けました!今度は猛暑です!湿度の高い日本では、日陰でも不快指数が高く逃げ場がありません。かなり体力を消耗します。今朝もラジオのニュースで、「普段なら歩ける距離をタクシーを使ってしまった。」とアナウンサーの方が言っていました。専門家の方が「無理せず、体力の消耗を防いだ方が良いです。」と言っていました。
猛暑からの退避、冷房の使用、こまめな水分補給、など熱中症にお気を付けください。
今回は熱田のコラムをお送り致します。
「続・要介護者に起きやすい、食べる機能の障害と食事の問題

9、障害の時期による対応の 違い

ここで注意することは脳性マヒなどの発達期以前に障害が生じた場合と、交通事故や脳卒中などいわゆる中途障害の場合では、食べる機能の障害に対する対応の仕方、考え方に共通な部分と異なる点がある事です。
食べる機能というのは、私たちが自然に出来るわけではありません。離乳期を通して新たに機能を獲得し、発達させてきた機能です。口唇ではさみ捕る動き(捕食)と、食物を舌の動きにより喉の方に送り込む動き(咽頭への移送)は、離乳の初期に覚え、発達し、離乳の中期でしっかりしてくる動きです。食物を咀嚼し、唾液と混ぜ合わせ、食塊とする動き(食塊形成)は、離乳の後期に獲得される動きです。
脳性マヒなどの障害児は、この食べる機能の発達期以前に障害が生じたわけですから、障害児の機能訓練では、食べる機能の障害を、食べる機能の発達の遅れ・停滞してとらえ、健常児が食べる機能を獲得していく過程と同様な過程をたどらせる、発達療法的な対応が必要になります。
たとえば、口唇の動きが悪く、食べ物を口唇ではさみ捕ることができず、舌も左右に動かせず前後には動き、顎がただ単純に上下に動くだけで、咀嚼運動が出ていない障害児の場合、まだ食べる機能は離乳の初期の段階にあると解釈し、口唇ではさみ捕ることを促す訓練、舌を上下左右に動かす訓練、咀嚼を促す訓練を同時にするのではなく、まず口唇ではさみ捕ることを促す訓練から開始します。
一方、中途障害では、捕食障害と食塊形成障害が同時に認められた時は、準備期の障害として、傷害された機能に対してすべて同時にアプローチします。

10、障害の程度により異なるゴール

どちらの場合も、リハビリテーションのゴールは全ての人が同じゴールを目指すのではなく、個人個人の障害の程度により異なるもので、障害の重い人は重いなりに、軽い人は軽いなりに持っている能力を最大にする努力をします。食べる機能の障害が重度で、食べる機能のさまざまな検査・評価の結果、口から食べること自体が生命の危険を伴うと判断された場合には、チューブ栄養に頼らざるをえない場合もあります。

11、歯と口の健康が条件

食べるという事は、ただ単に唇、舌、顎などが動くだけで上手くいくというものではなく、さらに口を形作る器官が適切な形態、健康な状態であることも必要です。きちんとした噛み合わせになっているか、歯が無ければ、歯のない所に入れ歯かブリッジが入っているか、入れ歯は合っているか、歯周疾患やむし歯になっていないかなど、を事前に見ておく必要があります。
口から食べていなかったり、歯ブラシなどが行われていないと、口腔内に刺激がほとんどないため、感覚が過敏状態になり、触れただけで嫌がったりすることがあります。そのときは、過敏をとることから開始しなければなりません。

12、食事は楽しく

食事は本来楽しいものでなくてはなりません。介護者の無理解、やる気が空回りして食べる意欲がないのを叱りつけたり、むりやり食物を口に押し込むことはすべきではありません

13、食べやすい食事とその工夫

介護を要する方にとっての食べやすい食事とは、どんなものでしょうか?要介護といっても状態はさまざまで、「飲み込みが悪い、むせる」ことだけが食事の問題ではありません。
摂食・嚥下機能障害から起こる誤嚥性肺炎や窒息などの重篤な状況に陥らせないためには、「飲み込みが悪い、むせる」を摂食・嚥下機能障害のサインのひとつと受け取って、日頃の食事を色々な観点から食べやすく整えておく事が大切です。
入れ歯(義歯)の有無を含めた口の健康状態、全身状態や姿勢を保つ力、手や指の自由度、認知面などを考えて、車椅子や食形態、食器を工夫しましょう。
また、食事はずっと続くものですから、介護者にとって準備しやすい、食べさせやすい食事の方が介護の負担を軽減させます。このところの介護市場の発展は目覚ましく、様々なタイプの介護食、栄養補助食品、とろみ剤、使いやすい食器などが、薬局や通販で購入できることになっています。
上手に利用したいものです。

14、要介護の方はどのタイプ

要介護者の食事の問題で相談を受けるケースは多岐に渡っています。全身状態が低下して姿勢を保つのがやっとの方、椅子に座って食べられるけれど入れ歯が合わなくて噛めない方、みそ汁やお茶でむせる方、手が不自由で食器が持ちにくい方、など。飲み込みに時間がかかって、要介護者のみならず、ご家族まで疲労してしまうケース。また、「食べこぼしが多い」と一言で言っても、姿勢が悪く前のめりになって食べこぼすタイプ、認知面で問題があり食べこぼすタイプなど、様々です。
この項では主に食形態と食器について説明していますが、以下のような環境を整えてみると食事の問題が軽減すると言われます。また、多くの専門職種が関わっていますので、それぞれの専門家に聞いてみると、食べやすい食事を提供できる思わぬヒントが見つかります。食事にまつわる困り事は、家庭の問題として介護者だけが抱え込むものではなく、専門家に相談すべき「疾患」と考えると良いのではないでしょうか。

15、食事の問題と対処のヒント

*姿勢を整えましょう
*口の中を点検しましょう
*食形態を見直しましょう
摂食・嚥下機能障害の疑われる要介護者にとって、一般的に食べにくく危険とされているのは、硬い物(豆、肉など)パサパサする物(クッキー、きな粉など)、口の中で物性が変る物(餅など)、口の中でまとまりにくい物(硬い物の刻み食など)、水分の中に粒が浮いているような物(三分粥、五分粥、硬い食材が入ったみそ汁やスープなど)、口の中での動きが速い物(水分)などです。

①飲み込みが悪い方に対しては
・素材・製品そのものが軟らかい食物を選ぶ(豆腐、ゼリーなど)。
・兆時間煮込む。圧力鍋などを利用した調理法で柔らかくする。
・とろみをつける(あんかけ、ホワイトソースなど)。
・とろみ剤を使用する。
・ミキサーを使う、裏ごしをする。
・市販のソフト食等を利用する。
・細かく刻む― 一般的に良く行われる方法ですが、硬い物の刻みや粒が残る状態は嚥下障害の方にはかえって危険ですので注意が必要です。

②噛む力が弱い方、入れ歯が無い方、入れ歯が合わないため噛む事が困難な方に対する工夫
・素材そのものが柔らかい食材を選ぶ。
・薄い葉野菜(レタスなど)、硬いわかめなどは噛みにくいので避ける。
・ソフト食等の利用。
・細かく刻む― 嚥下に問題がなく、舌で食物をまとめる力のある方には応急処置としてやむを得ない場合に行います。

③水分でむせる方には
・むせやすい汁物を特定し、とろみをつけるなどの工夫をする。牛乳はむせにくい反面、
塩分の入ったみそ汁やスープなどでむせる方が多いようです。
・水分に形のある具材が入っているものは危険なので避ける(わかめ、ナメコ入りのみそ汁、粒の残るお粥など)。
・飲むペース調整(見守り)をする。
*使いやすく危険の少ない食器に替えましょう
*安全な介助、見守りをしましょう
自分で食器を持って食べている方でも、一口量や食べるペースの調整ができなくなって
いるケースがあります。そのような方がカレー用スプーンなどの大きいスプーンで食事
をすると、食器は凶器に変わってしまいます。また、大きいスプーンを使用して介護者
中心のハイペースな介助をすると、誤嚥や窒息を引き起こす危険性があるので注意が必
要です。

今回はここまでとさせていただきます。次回も「続々・要介護者に起きやすい、食べる機能の障害と食事の問題」についてお話します。